山浦 雄一

「現場の判断、経営の決断 宇宙開発に見るリスク対応」

 

NASAも宇宙航空研究開発機構(JAXA)も致命的失敗の当事者となり、もう失敗は絶対に許されない瀬戸際で、現場と経営が厳しい批判に耐え成功の使命を達成した過去があります。

「はやぶさ2」の小惑星サンプル回収成功、国際宇宙ステーション(ISS)計画での実験棟「きぼう」の実現と宇宙飛行士やISS物資輸送機「こうのとり」の活躍、H-IIAロケットの連続成功、スペースシャトル搭乗実験の成果などは、日本が世界に誇る宇宙開発の代表例です。

しかし、成し遂げるまでの苦闘と逆転の舞台裏は、ほとんど知られていません。これら難関プロジェクトを題材に取り上げ、厳しい局面を「チーム一丸」で乗り越えた日米の現場と経営者達と、彼らを支えた関係機関や国家の姿を紹介しました[本書第1部~第6部]。

 

H-IIロケット連続失敗(1999年)の「真の原因」の解明、事故直後の新型ロケット(H-IIA)1号機打上げでの方針転換など、JAXA理事長の決断とともに成功と信頼回復にまい進したJAXAチーム、日本チームの姿と舞台裏を紹介しました[第4部]。

ソ連崩壊(1991年)に直面した米国の危機管理と米露宇宙協力開始、及び、2度のスペースシャトル事故(1986年/2003年)と飛行再開・政策転換、という重要局面におけるホワイトハウス、NASA長官、事故調査委員長らの行動と決断を取り上げ、有事の際の米国の底力を紹介しました[第2部、第1部/第3部]。

 

今日世界では70カ国以上が宇宙機関を持ち、2020年代前半には大きな新計画(宇宙探査、新型ロケット打上げ、有人宇宙活動)が目白押しです。加えて、地上技術の進化と新規ビジネスの創出により、宇宙利用は世界規模で益々日常化し、社会生活や経済活動への貢献拡大が進んでいます。第7部で、宇宙開発・利用の現実、宇宙探査の多面的意義、日本の新宇宙政策を述べつつ、2020年代への期待と課題を紹介しました。

 

宇宙開発には、リスク管理や危機管理を始め地上に活かせる知見が詰まっています。不測の事態への備え、説明責任の発揮は、多くの経験を経て築き上げたJAXAの組織文化でありリスク対応策でもあります。この点に配意し、本文各所で具体策を紹介しました。また、元JAXAで技術経営士の会の会員も何人か登場いたします。

幅広く多くの方にお読みいただき、新たな発見をしていただき、併せて、国際場裏で挑み続ける日本チームを応援していただけましたら幸いです。

 

【2021年2月6日付の毎日新聞朝刊、書評欄で紹介されました。今週の本棚:『現場の判断、経営の決断 宇宙開発に見るリスク対応』=山浦雄一・著 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

 

山浦雄一著 (元JAXA理事、現筑波大学客員教授)
出版社:日本経済新聞出版
発行日:2020年12月9日
四六判 全404ページ 本体1,900円+税

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