寺倉 修②

「設計力」こそがダントツ製品を生み出す
日刊工業新聞社 初版2018年2月、初版
 著者 株式会社ワールドテック 寺倉 修

 製造業は今、100年に一度の変革期を迎えたと言われている。IoTやAIの急速な進化と普及は、モノづくりが新たな段階に入りつつあることの明確なシグナルである。こうした世の中の動きを先取りするかたちで、自動車メーカー各社は、従来の自前主義を脱し、すでにAIなどをめぐりIT企業との協業を始めている。当然、部品メーカーも自動運転化や電動化を踏まえ、今までとは異なるシステム部品への取り組みを模索する企業が増えている。
 もちろん、社会環境がいかに変わろうと、製造業の基本はお客様が満足する商品を提供することにあり、それを踏まえたうえで、競合メーカーに対し優位性を保ち続けることである。これはAI化などにかかわらず、普遍的に取り組まねばならない課題であることは言うまでもない。
 本書は「お客様の信頼を勝ち得、競合に勝つ」との普遍的な価値を命題とし、そのもっともシンプルな目標として「世界No.1製品の実現」をテーマに掲げている。具体的には、世界No.1製品であるための「ダントツの性能」と「ダントツのコスト」達成への取り組みだ。この取り組みは「先行開発段階の設計力」と、この設計力のアウトプットを受ける「量産設計段階の設計力」から構成される。後者「量産設計段階の設計力」については、2009年に上梓した『「設計力」こそが品質を決める』(日刊工業新聞社刊)で取り上げた。そこでいう設計力とは、市場で品質不具合を出さない取り組み、つまり、「先行段階の設計力」で見極めたダントツ目標値を品質120%で達成する(100万個造っても1個たりとも不具合を出さない)取り組みであった。一方、2014年に上梓した『「設計力」を支えるデザインレビューの実際』(日刊工業新聞社刊)は、先行段階、量産段階の二つの設計力の相互作用を高める活動を表したものである。
 本書では、主に「先行開発段階の設計力」を取り上げている(一部、量産設計とのつなぎの部分ではそのエッセンスを紹介している)。まずはダントツ目標の基本コンセプトをいかにして決めるか、どのようにしてその目標を実現(技術的な目途付け)するかなどを検討していく。ターゲットとなる製品の選定から、ダントツ目標の設定、及びその目標値を実現するまでの取り組みまでを詳説するとともに、目標の実現に必要となる先行開発段階の全プロセスを紹介し、実現に際して満たすべき要件、実現を阻害する要因の打破について掘り下げて解説している。更に、世界No.1の製品への取り組みをイメージしてもらうためにいくつか事例を紹介する。ダントツ目標とは、実は身近にあるということを示す例、ダントツスピードの開発例など、「競合に勝つ」ための取り組みを学ぶ。最後に世界No.1製品の取り組みに必要な設計者個人のありよう(あるべき姿)についても取り上げている。

 製造業は設計段階の取り組みが品質・コストの80%を決めるとの現実がある。これが設計力の強化に取り組まなければならない理由である。そして先述のように、この設計力の強化は2つの面で捉えなければならない。1つは「品質」。市場で品質不具合を出さない取り組みを行うこと(量産設計段階の設計力)。もう1つは、競合メーカーに対し「優位性」を確保するということだ(先行開発段階の設計力)。この2つの取り組みが相まって真の優位性を確保でき、製造業として初めて成長することが可能となる。

 本書によって、先行開発段階の設計力は「いかにあるべきか」「何を取り上げるべきか」「どのように取り組むべきか」がご理解いただければ幸いである。モノづくりの変革期の今こそ、基本に立ち返った取り組みが一層重要となってきている。読者諸氏の奮起とチャレンジを期待したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です