日本の研究開発「脱化石燃料への課題」

越智洋

技術経営士の会

 

2050年までに化石燃料ゼロを目指す事が宣言された。2013年を起点に2018年を見ると、CO2発生量は既に14%減少している。その内訳は総エネルギー消費減6%、原子力増3%、再生可能増2%、バイオ燃料増1%、天然ガス比率増2%であり総エネルギー消費減の内1%は人口減によるものであり、5%は省エネ努力又は天候等によるものである。

ここで2050年に向けて解決すべき課題について検証する。

 

世界の現状把握

  • 化石燃料による CO2生成量は、34Gt*1(4ppm)であるが、1990~2018間での地

球上で実際の増加量は年平均2ppm*2である。仮にエネルギー消費が増加しないとしても、CO2を増加させない為には最低でも生成量を半減する必要がある。

  • 化石燃料の消費量は6GTOE/年(2018)であり、その32%は発電用で、残りは直

接消費である。故に発電源を非化石化すると、化石燃料消費量は32%減となる。

  • 化石燃料の内CO2生成への寄与率は、石炭45%石油34%天然ガス21%である。故に石炭から天然ガスへ切替えれば、約20%のCO2削減になる。

この現状を踏まえて今後の非化石エネルギー源を探ると

  •  再生可能エネルギー(太陽光、風力、潮力、水力、地熱等)
  •  原子力
  •  水素

等が候補として考えられるが、水素は現在主として化石燃料から製造されており、脱化石目的としては、電力による「水の電気分解」を使わざるを得ないので、水素利用は非化石電源の存在が前提となる。即ち、「脱化石とは、エネルギーの電力化であり、その非化石電源を如何に探すかである」と言い換える事ができる。

現時点の非化石電源としては、原子力、再生可能エネルギーの、組合せである。

原子力利用は、政治的問題を別にしても、ウラン資源の有効活用の観点から増殖炉の実用化が不可欠であり、2050年までには限定的であろう。

再生可能エネルギーの内水力は現在全発電量の16%を占めているが、今後の経済的開発可能量は既設の1.5倍程度(従って発電量の25%程度)、地熱は現在設備規模で0.4%であり開発可能性も1%以下なので、太陽光と風力に注目して、以下に述べる。

 

世界で何ができるか

2018年世界の総化石燃料消費量は11.6GTOE/年*1であり、その32%が発電用で、発電量は17094Twh/年*1であるから、今後世界のエネルギー消費が一定としても、必要とされる非化石電力は現状世界の原子力発電所(計画中を含む)が390Gw、世界の耕地面積1560万㎢等を考慮すれば次表の様になる。

  化石発電 ケースⅠ

(全電化)

  ケースⅡ

(半電化)

 発電量   17094Twh   53000Twh   26500Twh
 原子力発電

(現在390Gw)

  2300Gw

(現状の6倍)

  7100Gw

(18倍)

  3600Gw

(9倍)

太陽光発電面積

(60Gwh/㎢)

  28万㎢

(耕地の2%)

  90万㎢

(6%)

  40万㎢

(3%)

洋上風力海岸線

(400Gwh/㎞)

  43000km   133000km   66000km

太陽光、風力は発電所と需要地が、送電線で結び得る距離にある事が、必須条件になる。

 

日本で何ができるか

2018年日本総消費エネルギーは、426MTOE/年(その内化石燃料消費量は378MTOE/年)*1、であり、2050年には人口が14%減となり、その為の消費エネルギーも14%(60MTOE)減じて化石燃料は318 MTOEとなり、これを電力換算すれば1650Twhとなる。又2013年の428MTOEの1/2の214MTOEを許容すれば削減すべきは、104MTOE(=318-428/2)となり電力換算は、510Twh。

現状日本の原子力発電所(計画中を含む)が33Gw、日本の陸地面積36万㎢、耕地面積4.4万㎢等を考慮すれば次表の様になる。

  2018年

化石発電

  ケースⅠ   ケースⅡ
(全電化) (2013の1/2許容)
  発電量   769Twh   1650Twh   510Twh
  原子力発電   103Gw   221Gw  68Gw
(現在33Gw) (現状の3倍) (7倍) (2倍)
  太陽光発電面積   1.3万㎢   2.8万㎢   0.9万㎢
(60Gwh/㎢) (耕地の30%) (64%) (20%)
  洋上風力発電海岸線   1900㎞   4100㎞   1300㎞
(400Gwh/㎞) (海岸の6%) 13% 4%

 

以上から、世界に於いては、太陽光発電を主軸に考えるのが有力に見える。

一方日本に於いては、太陽光発電用の土地を探す事はかなり困難で原子力・太陽光・風力の組合せと、省エネ努力及び化石燃料の内、天然ガス比率を上げる事によりCO2削減を目指す事になると考えられる。

 

研究課題

以上が現状であるがこれらを改善するための研究課題を次に述べる。

1.電化による省エネルギー方策(総エネルギー消費量削減)

電気自動車はガソリン車に比べ、発電ロスを考慮してもハイブリッド車並みの省エネ効果が期待できる。同様に他の動力に於いても省エネが期待できるのではないか?その他熱利用ではヒートポンプでの省エネは明らかであり、全てのエネルギーを電化した場合の省エネルギーの可能性を求める。

2.太陽光発電の効率アップ(太陽光必要面積の縮小)と低価格化

光電変換素子の研究の他、設置パネルの省エネ太陽追尾方法(日間及び季節間)等を検証する。

3.蓄電池の効率アップと低価格化

太陽光発電は発電時間が限定される為、蓄電池の利用は不可欠で相当量の蓄電池が必要である。

4.太陽光発電と蓄電池を主体とした電力系統のあり方

現状とは異なった考え方の電力系統が必要である。

5.電力を利用した化石燃料製造(水素に代わる非化石燃料)

現在、電力から水素を製造するエネルギー効率は約80%と言われているが、それと同等以上の効率で化石燃料が製造できれば使い勝手のよい燃料が出来、それは非化石エネルギーと位置付ける事ができる。

6.水素の貯蔵運搬の効率化

化石燃料より取扱の難しい水素燃料の取扱いの効率化が必要である。

7.石炭石油を原材料とする製品の代替技術開発

原料炭を使用しない製鐵、石油を使用しないプラスチック等の開発が必要である。

8.増殖型原子炉の実用化(ウラン資源の活用拡大)

現行の軽水炉では、近い将来ウラン燃料が枯渇すると考えられる為増殖型原子炉の実用化が必要である。

 

日本の挑戦

2013年から2050年に向けてのCO2削減は、既に達成済の14%、エネルギー消費の自然減(人口減少)14%、既設の原子力稼働増8%、耕作放棄農地約4000㎢(国土の1%)での太陽光発電増10%を合計すれば、半減程度は可能と思われる。完全な脱化石の推進を目指すなら、省エネ努力による以外は、我が国単独での取り組みには限界があり次の選択肢から選ぶ必要がある。

1. 国際条約を結ぶ

(1)国毎に国土面積の1%の太陽光発電を義務付ける。但し当該国の発電用化石燃料使用がゼロになればその義務は解かれる。

(2)その義務を達成する為の経費は、世界の化石燃料消費量(又、CO2発生量)に応じて拠出された賦課金によって補助される。

(3)これにより大多数の国は、発電用の化石燃料0を達成する。(即ち、世界の化石燃料使用は30%減少する)

(4)その後各国の電化の進展に合わせ、化石燃料の使用は減少する。

2. 二国間協定を結ぶ

(1)太陽光発電余力のある国(例えばオーストラリア)の余剰太陽光発電を利用して製造された水素を、日本に輸出する契約を結ぶ。

(2)これにより日本は、発電用の化石燃料0を達成する。

 

尚2030年に関しては、エネルギーの自然減が5%程度の為、2013年比46%減を達成する為には既存の原子力発電所全稼働と遊休土地の太陽光発電に加えて、更なる太陽光発電・洋上風力の開発又は省エネ技術開発を8%程度追加する必要がある。

 

注)*1 IEAデータ  *2 気象庁データ

注)本稿に於いて、原子力発電稼働率:85%、太陽光発電:年間1000時間で60Gwh/㎢/年、風力発電:年間2000時間で4Gwh/基/年とした。

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