幸せをもたらす日本的経営 ~中長期的視点の技術開発と技術経営~ 神永 晉

 会社とは社会の公器であり、会社の使命は、人々が幸せな生活を送ることができる社会の実現のためにイノベーションを起こすことにある。真のイノベーションを起こすためには、中長期的な視点で、研究開発に投資し、事業化さらには産業化を目指すことが必要である。そこではリスクテークが活発に行われ、イノベーションを通じて、革新的技術と新たな基幹産業が創出される。同時に、企業活動の成果としての利益が、そこに関わる人たちに公平に配分されなければならない。しかるに、米国に端を発する「株主至上資本主義」においては、会社は株主のものであり、株主への配当を最大化することが企業の目的であるとする。それによって、短期志向による利益追求を余儀なくされ、本来の企業活動に資金が回らず、マネーがマネーを呼び、リーマン・ショックに代表される金融危機を引き起こす結果となった。一方、日本において長年培われて来た本来の経営土壌は、近江商人の三方良し (売り手良し、買い手良し、世間良し) や、400年前から続く住友の理念にある、浮利(目先の利益)に走らず、信用を重んじ、確実を旨とし、自利利他公私一如とする、に見られるように、顧客、従業員、仕入先(協力会社)、地域社会、地球環境等、企業活動に関わる人たちに公平に利益を配分しながら、中長期的な視点から研究開発に投資し事業化を図ることを常として来た。それによって企業価値を高め、株主へも恩恵をもたらすことになる。これが、会社は社会の公器であると謂われる所以である。このような日本の経営土壌に根差した理念を忘れて、短期的志向に基づく米国型の経営手法に走った企業が、大きな問題に直面している昨今を見ると、本来の姿を取り戻し、日本的経営を確立して世界に発信することが、正に喫緊の課題である。

 昨今、注目を浴びているIoTの要となる微小なセンサーの開発・製造を可能とする微細加工技術を、世界に先駆けて開発・事業化し、現在のIoTに至る急速な発展に寄与して来たが、その間、英国小企業の持つ固有技術の将来性を理解しない株主から解き放つための買収に始まり、顧客との共同作業、開発・事業化を担う従業員への適正な還元、地元への貢献といったことの実践を通じて、冒頭に述べた日本的経営が常に有効に機能し、海外でも普遍的であることを実感して来た。IoT世界では、センサー・ネットワークによる新しいビジネス・モデルが、食糧、医療、環境、防災、エネルギー等の地球規模の課題を解決すると言われる今こそ、日本的経営が、中長期的視点に基づき、企業家精神を発揮して、幸せな社会の構築を目指すことによって、人々を豊かにする。動きの激しい市場の要求を技術的な観点から的確に把握し、将来を見据えた技術開発とともに、社会への実装を目指す技術経営を推進する上で、日本的経営が重要な役割を果たすことは間違いない。

神永 晉 プロフィール
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