夢を描けるか、日本のインフラ事業の本質 「エネルギー」~脱温暖化とエネルギー政策~

越智 洋

技術経営士の会

 

日本のインフラ事業をエネルギー政策という側面から、そこに潜む問題に関して出来るだけ実データ(IEAデータ)に基づいて検証してみた。なお、本稿で出典を示さずに記すデータは、国際エネルギー機関(International Energy Agency)の統計(https//www.iea.org/data-and-statistics)による。但し、エネルギーロスの内、電力化ロスと、輸送ロスの分離については、電源別発電実績・一般的発電効率・送電ロス等から推定した。

 

気候変動と炭酸ガス・化石燃料の関係

 

温室効果ガスと、地球温暖化の関係が問題になってから30年経つが、検証できたという意見とできないという意見が混在している状況である。しかし、地球の平均気温が上がっている事と、炭酸ガス濃度が上がっている事は明らかである。気象庁によると、2017年の、化石燃料起源のCOは、326憶トン/年(石炭145石油114天然ガス67)であり、これは、地表空気総量の4ppmに相当し、又、地球上のCOは、1990年の360ppmから2018年の410ppmまで、1.8pm/年の割合で、増加しているという。(日本発は、11憶トン/年(石炭4.5石油4.1天然ガス2.4)である。)単純計算によれば、化石燃料起源のCOを約45%(=1.8/4)減らせば、炭酸ガスの増加を防ぐことができる。

 

日本のエネルギー構造(MTOE=石油換算百万トン)

 

日本の一次エネルギー供給量は、1990年の440MTOEから2000年までに、約18%増加したものの、その後数年間、同じレベルで推移し、リーマンショック及び、東日本大震災等を経て、現在は、1990年レベル以下まで低下している。一方、最終エネルギー消費量から見ると、1990年の285MTOEから、2000年の330を経て、2017年の292となっている。

 

一次エネルギーと消費エネルギーとの関係を2017年の事例について検証すると、下記の表の様になる。(単位:MTOE)

*この内、輸送用石油は、69

 

即ち、化石燃料の44%は電力化され、又、電力の内78%は化石燃料起源である。これは、ロス比率から見ると、一見、電力化は非効率に見えるが、一般的には、使用段階での効率は、電力の方が高い。この件に関して、電気自動車については、後述するが、電化厨房と、ガス厨房の室温上昇の差を見れば、明らかである。

 

世界のエネルギー構造

 

2017年の世界のエネルギー構造は、下記の表の通りである。(単位:MTOE)

*このうち輸送用石油は2589

 

即ち、化石燃料の36%が電力化され、電力の内65%が、化石燃料起源である。又、化石燃料の内25%は、輸送用(自動車)に使われている。

 

 

 

炭酸ガス発生を抑制する方法

 

炭酸ガス発生を抑制する方法として、「省エネ」、「発電の脱化石燃料化」、「石炭の天然ガスへの置き換え」、「自動車の燃費向上」、「電気自動車」、「水素自動車」、「CCS(炭酸ガス地下埋設)」などが考えられる。

 

省エネは、地球にとっては、最も望ましいが、これだけで、45%削減は、難しい。現在世界で、発電用に使われる化石燃料は、36%(日本44%)であるから全て、原子力又は、再生可能エネルギーに置き換えれば、発電の脱化石燃料化は可能である。また、同じ熱量を発生させる石炭に対し天然ガスのCO発生量は、1/2であるから全体で、石炭の天然ガスへの置き換えによって、22%(日本では、20%)のCO削減が可能となる。

 

化石燃料の25%が、自動車用に使われているので、その熱効率を2倍に出来れば、自動車の燃費向上につながり、10%余り(日本では、10%弱)の削減が期待される。しかし、自動車用の燃費が向上したとしても15%(日本では10%)は残る。それを電気自動車に置き換えた場合、プリウス(25㎞/ℓ)とリーフ(10㎞/kwh)の例について、エネルギー比較をしてみると、ガソリン車は、1.36MJ/㎞、電気自動車は、0.36MJ/㎞であるが、ここに発電効率40%を加味すると、0.9MJ/㎞となり、燃料消費は、66%(=0.9/ 1.36)になる。即ち、輸送用が15%(日本10%)減となり、発電用が、10%(日本7%)増となる。(差引、世界5%減、日本3%減)

 

一方、水素自動車は、走行中のCO2排出は無いが、水素製造過程での、電気その他のエネルギーの必要性から、完全脱炭素とは言えないし、CCS(炭酸ガス地下埋設)は、現在実験段階であるが、実験規模は、数十万トンレベルであり、年間100憶トンには、程遠い。

 

電力の非化石燃料化における太陽光と原子力の問題点

 

脱CO2には、いくつかの方策の組合せになるが、その中で、技術的、規模的に有効と考えられる電力の非化石燃料化の内、太陽光発電と原子力発電について、それぞれの問題点を考える。

 

  • 太陽光発電

現状の太陽光パネル1枚:310W、1.64㎡(シャープNU-310YC)で、年間稼働1000時間とすれば、発電量:16.4kTOE/㎢/年(=310kwh/1,64㎡/年)であり、一般的には、発電所の面積は、パネルの2~5倍必要とされるので、面積と発電量の関係は、4.7kTOE/㎢/年となる。日本の火力発電量は、71MTOE /年(送電ロス含み)であるから、その全量を賄う太陽光発電所面積は、15,000㎢となる。これは、国土面積の4%であり、国内ゴルフ場面積の5.5倍である。仮に、世界の火力発電量1426MTOE/年を太陽光発電で賄うとすると、それに必要な太陽光発電所面積は、30万㎢であり、日本全土の約80%に当たる。

 

  • 原子力発電

日本の既存の原子力発電所全てが稼働したとして、33Gwで年間稼働率85%とすれば、21.5MTOE/年であり、稼働中の2.8MTOE を含め火力発電量の約30%(全発電量の24%)を賄うことができるが、火力全量賄うには、更に既存の約2倍の増設が必要である。これを、世界規模で考えると、既存の約6倍の原子力発電所の増設が必要になる。

さらに、原子力発電には、「使用済み燃料の処分地問題」と「ウランの資源問題」の2つの問題がある。

 

使用済み燃料の処分地問題について、私は、この物質は、地下300mに埋設されるので、そこに近付かない限り無害であり、テロ等に悪用されるリスクも無く、景観を阻害する事もないので、風評以外のリスクは無いと思うが、自治体が、自ら手を挙げる現行制度では、政治的に難しい問題になっている。使い道の無い、国有地などが、立候補して欲しいと考える。因みに、この処分地の所用面積は、地上2㎢、地下5~6㎢程度である

 

もう一つの問題であるが、このまま、軽水炉の拡充を続ければ、ウラン資源問題に直面する事となる。現在実用化されている軽水炉では、全体の0.7%しかないウラン235のみ使用可能であるが、後の99.3%のウラン238は、劣化ウランとして放置されている。これを活用するのが「高速増殖炉」であるが、いまだに実用化の目途が立っていない。

 

以上の様に、太陽光発電は、設置面積、原子力発電は、使用済燃料処分地と、高速増殖炉実用化と言う問題を抱えているが、これらの解決こそが、日本の、世界のエネルギー政策の根幹と考える。

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