東京工業大学「CUMOT×STAMP 連携プログラム」新興国での新事業展開 ~野外科学による問題解決への挑戦~

講師:岡部 聰
事業構想大学院大学 特任教授
元 トヨタ自動車(株)専務取締役
現 技術経営士

 

1.野外科学は問題解決への入り口

東京工大CUMOTプログラムの皆様はこれまでに、又今後も仕事の企画や実践に取り組むことが多いでしょう。しかし、それら一つ一つは全く同じことはないはずだ。実業の世界では実社会を相手にするものであり再現性不可能な一期一会の事象だからだ。海外事業、とりわけ新興国での事業展開でも未知の、未体験のことが多く道なき道を切り開くパイオニアワークの連続である。そこで一番重要なことは対象となる現場の実態調査、ニーズの把握である。この事は私の学生時代にKJ法の創始者で恩師の川喜田二郎先生からみっちりと仕込まれた。実態把握がしっかりとできていれば後は専門家などの知識で方法論を選択できるが、実態把握をおろそかにして己の思い込みで事を起こすと問題解決は遠のいてしまうケースが多い。

 

2.海外事業の企画と展開 ~パイオニアワークの事例紹介~

  • 東南アジアでモータリゼーションが起こる以前の1970年代に、アメリカの自動車メーカーが貧しいアジアの人向けに「安い乗用車」アジアカーを開発、導入したが全く売れなかった。現地のニーズを十分に調査せず価格帯だけのマーケティング企画だったからである。我々は、2年をかけた調査結果により現地の人は「安い乗用車」よりも『多目的に使えるトラクターのような車』を望んでいることを理解した。現地主体で安く作れる多目的車(ドアやプレス品なし、ガラス、フレームなどは建設資材活用)を導入すると爆発的に売れた。ニーズの的の中心を射た思いであった。
  • インド市場は外国資本参入を厳しく規制しており、トヨタの事業基盤は全くない時代に本格参入したがチャレンジの連続であった。通常の海外展開は、①完成品輸出、②現地販売体制整備、③現地単純組立開始、④現地部品採用、⑤本格製造開始というステップを踏まえるが、一度に生産・販売をスタートさせねばならなかった。現地政府などとの折衝、パートナーの選定、工場建設、部品供給体制確立、販売店の選定、人材育成等々。振り返れば多くの困難があったが、そこで大切なことも学んだ。先ず、未開の市場ではその国、社会、ユーザーの声を真摯に聞き入れ、上から目線ではなく目線を合わせる。そしてインドのような巨大な潜在市場では「小さく生んで大きく育てる」精神で先ずは市民権を確立する。そのうえでブレることのない中長期計画を目標として明確に持つ、等々。

 

3.事業展開5つのポイント

①ニーズの把握、②コンセンサスの形成、③目標の明確化、④チームワークの醸成、⑤問題解決への強い意志。

これらの要素を評論家的でなく自分事として具体的な形に落とし込むことが大切である。また分かっているようで分からない「グローバル」、「ブランド」という概念を日本語(自分の言葉)でどう表現するか?暇なときにでも考えてほしい。

 

4.最後に

「グローバル」、「ブランディング」という言葉がビジネス界にあふれているが実務を展開する我々にとり、どのような意味合いがあるのか具体的なイメージを持っている人は少ない。今回はオンラインということもありフリートーキングが十分できなかったが、昨今流行りの「カタカナ」概念をどれだけ明確に自分の言葉(日本語)で表現し、人に説明できるかということを常に心がけることは大切なことである。

1 個のコメント

  • 『昨今流行りの「カタカナ」概念をどれだけ明確に自分の言葉(日本語)で表現し、人に説明できるかということを常に心がけることは大切なことである。』
    全く同感です。「ソリューション」→「問題解決」
    やはり日本語は腑に落ちます!

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