東京工業大学「CUMOT×STAMP 連携プログラム」『新しい時代の研究開発とそれを活かす技術経営』 ~オープンイノベーションを実のあるものにするには~

講師:上田 新次郎
元 株式会社日立プラントテクノロジー
代表取締役副社長
現 技術経営士

 

2020年12月8日、「新しい時代の研究開発とそれを活かす技術経営~オープンイノベーションを実のあるものにするには~」と題して、東京工業大学「CUMOT×STAMP連携プログラム」にて16名の受講生を対象にオンラインで講義を行った。

 

  • 企業の研究開発の歴史と変遷

企業の基本機能は、「マーケテイング」と「イノベーション」の2つであり、研究開発はいつの時代も企業の成長エンジンである。企業における研究所の誕生は20世紀の初頭で、1930年代デュポン社のナイロンの発明と、独占的事業化に範を得てリニアモデルに基づく中央研究所の時代が始まった。戦後、リニアモデル全盛の時代が続いたが、1980年代以降、米国に次いで日本でも中央研究所の時代は終焉し、マーケット重視、短期回収評価などにさらされるようになった。21世紀になってデジタルテクノロジー等技術革新の拡大とスピードは格段に上がり、企業の研究所は新しい時代に入った。

 

  • オープンイノベーションの時代の研究開発

新しい時代では、マーケット重視にとどまらず、顧客の課題を「協創」により解決するソリューション創造型研究、異業種が連携する水平分業型共同研究、学のシーズに期待する産学連携、ベンチャーとの連携などいずれもオープンイノベーションを活用するスタイルになった。事業の形態も大きく変わりつつある。モノづくり系企業(メーカー)は、製品事業からサービス事業との融合に向かい、インフラ、サービス系企業においても高度技術社会に対応する技術経営は経営の肝になりつつある。オープンイノベーションはデジタルテクノロジーと相性がよく、その活用は企業の盛衰のカギを握るであろう。事例として、顧客との協創をデジタルテクノロジーをベースとして推進している日立を取り上げ、その狙い、事例、課題などについて述べた。

 

  • 新しい時代の技術経営の役割とヒント

21世紀のキーワードは、環境、グローバル、デジタル、生命科学などである。次世代の技術経営のヒントは、環境経営・ESG投資、デジタルテクノロジーを活用した生産性の向上・新生活機会の提供などであり、ビジネスチャンスはいたるところに存在する。技術経営の役割は、現状を認識しながら10年から20年先の将来像を描ける羅針盤を持ち、イノベーションに挑戦することである。

 

  • 活発な議論と質疑が展開されたディスカッション

オンラインであったので一問一答のような形式が多くなってしまったが、活発な質疑と議論がなされた。新事業創出の役割を担う立場からは、マネジメントの苦労とそれを乗り越えるアドバイスなどを求められた。新分野開拓成功のための秘訣はないが、時代を読む、世の中の先を読む、仲間が寄ってくるだけの人間力を磨くこと、カギとなるアイデアや技術を持つこと、経営リソースを確保すること、運、執念などいずれも大事であることを伝えた。新分野・新製品・新サービスの創出はいつの時代も難しいが、マネージャーとしては求心力と持続力が大事であること、”失敗も財産である”と評価してモチベーションを維持すること、さらにリーダーとしては“バランスをとるということではく、牽引するリーダシップを発揮すること”が最も大事であることを伝えた。

 

最後に…

受講生はそれぞれの企業、それぞれの立場で悩みを抱えながらイノベーションを起こす志を持って、業務に取り組んでいることが感じられた。約60分の講義とその後の活発な質疑・討議で認識を深め、新たな糧を共有できた。この講義とデイスカッションが明日へ向かう受講生の皆さんに聊かでも役立つことを願うものである。

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