東京工業大学「CUMOT×STAMP 連携プログラム」経営者視点の実践的開発プロジェクトマネジメント

講師:  井上 保
元 富士通テレコムネットワークス(株)代表取締役社長
現(株)アルファシステムズ 顧問
技術経営士

 

「経営者視点の実践的開発プロジェクトマネジメント」と題して、2021年1月19日東京工業大学「CUMOT✕STAMP連携プログラム」にて講義を行った。当初、田町キャンパスからのリモート・オンライン講義の予定であったが、新型コロナ感染拡大防止の緊急事態宣言を受け、急遽自宅環境からの講義となった。

 

1.「プロジェクト」について語る

「プロジェクト」は、制約(人、もの、金、時間など)下で「ある目的」を達成するために組まれる「人の協働の場」である。人間行動特性の理解無くして、価値を産み出す「協働」は生まれない。

「プロジェクト」の結果として「成功と失敗」がある。プロジェクトの周りに様々なステークホルダーが存在する。そのステークホルダー毎にゴールイメージが微妙に違うことが、「成功と失敗」を左右する。ゴールに向けてステークホルダーの期待をコントロールすることが大切である。そこで、様々なステークホルダーを超上流段階から巻き込み、一人称でプロジェクトへの関わりをもたせ当事者にすることが肝要である。

「マネジメント」を管理の側面でのみ捉える人や組織が多いが、管理はその一面に過ぎない。所与の制約を受入れた上で、その持てる力を最大限引き出し、効果的により多くの成果を上げるための実践的な知恵・工夫が「マネジメント」である。

ものごとには二面性があり、良い点も、悪い点もある。良い点を活かし、悪い点を軽減する「両備え」の工夫と立ち位置(視座)を変えてものごとを観る多面的な視点が重要である。

個人も組織も根底に希望や期待があって、都合の良い見方や都合の良い解釈に陥りがちであるが、現実は非情で「おこって欲しくないこと」が数多くおこる。プロジェクト遂行にあたり「悲観的に準備し、楽観的に実行する」ことが大切である。

 

2.リスクとチームの成長について語る

リスクには顕在リスクと潜在リスクがある。リスクの回避・軽減・転嫁による影響最小化を実現するため、リスクをフィードフォワードで早期に見える化し、対処すべきリスクを選別した上で集中的に対処することが重要である。検知と解決では必要とする思考の方向性が真逆である。両方向の思考を得意とし、両方の力量を持つ人は希にしかいない。リスク検知の仕組み(リスク検知を主導するリーダーとそのスタッフ)と、リスク解決の仕組み(リスク解決を主導するリーダーとそのスタッフ)を別々に組織し、日頃から技量を磨いておくことが重要である。対処のためのバッファ(余力:もの、金、設備など)は全体でのみ用意し、的確なタイミングで一気に投入することが大切である。

人とチームの成長を図るために、「努力して達成可能な少し高いギリギリ目標(チャレンジ目標)」と「その達成を支援する仕組み」を併用することが大切である。「ギリギリ目標」を努力し実行しても小さな遅れは発生するが、その遅れをリカバーする努力・工夫が大きな学びとなる。一方、遅れが拡大し回復不能なレベルになる前に全体バッファを用いて救ってもらえる安心感が「ギリギリ目標」への積極的チャレンジを引き出す。

 

3.「クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント:CCPM」について語る

「制約条件の理論:TOC」とその理論に基づく「クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント:CCPM」を紹介した。

<CCPMの要点> ・ゴール達成への強い拘り

・全体最適アプローチ

・チームの成長

管理手法としてではなく、CCPMの要点を現場の実情に合わせて適用することを伝えた。

 

4.「問題解決」について語る

問題解決にあたって「作り込みの原因」と「検出もれの原因」の両面で真因を突き止め、水平展開と再発防止することが大切である。見せかけの問題解決はより深刻でより重大な問題を後々誘発するため、焦らず時間・コストをかけて「なぜなぜの繰り返し」の中で真因を見いだし真因を解決する姿勢の重要性を伝えた。

 

5.講義後半は、ケースについて討議した

「炎上プロジェクトの立直し」をテーマに、立直し途上での火消し役と上司の経営者との関わりの中で、「火消し役が経営者に『プロジェクトを守るために』期待する行動」と「経営者にしかできない行動(さまざまなステークホルダーへの対応)」を、事前学習の上クラス討議した。ボスマネジメント、ステークホルダーマネジメント、コミュニケーションマネジメント、チームモチベーションアップなどの視点で活溌に討議した。

 

最後に…      

自宅からの孤独な環境の下でリモート講義し、リモートワークの課題を少しだけ実感した。CUMOTの先生とアシスタントの方の支援のお陰でなんとか無事に終えることが出来た。聴講生は積極的に講義に参加し、活発に学んでいると感じた。カリキュラム終了後、参加可能な方に残っていただき、30分程延長してQ&Aを実施した。活発な討議と多くの質問のお陰で、充実した時間となった。講義、討議、質問対応を通して、「他者に伝える」中で多くの気づきを得ることが出来た。聴講生の皆さんが何らかの気づきを得て実務の中で少しでも活かしていただけるなら望外の慶びである。このような貴重な機会を与えていただいた関係者の皆さまにあらためて感謝申上げたい。

2 件のコメント

  • 「両方向の思考を得意とし、両方の力量を持つ人は希にしかいない」は、自分の仕事を振り返っても、ずしりと来ました。

    • 寺倉さま コメントありがとうございます。
      設計のプロである寺倉さまにずしりと感じていただけて嬉しい限りです。技術経営・余話を楽しみに拝読させていただいております。
      「検知と解決では必要とする思考の方向性が真逆である。両方向の思考を得意とし、両方の力量を持つ人は希にしかいない。」と講義しました。
      人の多様性、特性・長所の多様性を活かすことが益々大事になっていると思います。

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