東京工業大学「CUMOT×STAMP 連携プログラム」 ~『経営の現場と危機管理』~

講師:中村房芳
元 ㈱IHI代表取締役副社長
現 技術経営士

 

2月2日、東京工業大学「CUMOTⅹSTAMP連携プログラム」にて、「経営の現場と危機管理」と題して、14名の受講生にオンライン講義を行った。

 

1.経営そのものとも言える危機管理の要諦は危険予知と、戦略・信念にある

実際に日々の経営をしている場面を「経営の現場」と称している。「経営の現場」では日々新たな局面、課題に対処する。言ってみれば危機対応の連続であり、危機管理は「経営の現場」そのものである。

リスクには3段階ある。第一は全く問題の起きていない段階。第二は問題は起きているが組織内としては許容範囲である段階。第三は第二段階を超えているが組織外/社会的には許容範囲である段階。 それを超えればクライシスである。

危機管理の実効を上げるキーは、危機(課題)に早く気づき、クライシスを過大に想像すること、すなわち「危険予知」である。この危険予知が危機意識を高め、リスクの第二段階での対応をいかに早く行うか、即ち成否を決める。一方、日々の危機対応にあたり、判断の為のすべての情報がそろうわけでも十分な時間があるわけでもない。十分な情報のない中、後悔のない判断を迅速に行い、施策をやり切らねばならない。その為には日ごろよく考え抜かれた、そして組織で共有された戦略、信念を持っていることが必要である。そういった、戦略・信念に照らし合わせれば、難局においても進むべき方向性を迅速に決断できる。

 

2.ケーススタディーでいろいろな局面での着眼点、考え方や取り組み姿勢を紹介

戦略とは何か、組織をリードするものである。企画部門や、コンサル会社に作成を頼むこともあるが、その肝である目的やポリシーはトップが持っているべきもので誰かに作らせるものではない。

経営の現場では日々発生している課題や問題点に気づき、対応を網羅的によく考えて、効果的な施策をやり抜くという3ステップをしっかりと回すことが必要である。この3ステップは自然に流れるものではなく、考えることは得意でも実行が苦手、あるいはその逆のケースも出てしまう。 個人の資質に頼るのは限界があり、この3ステップを行う機能を仕組みや組織の中に織り込んで、3ステップを自働化することが必要である。

交渉においては、“本音”よりも“建前”の方が本質的である。交渉、特に外国企業との交渉では本質的な目的を見損なわないことが重要であるが、往々にして明確な指示が抜けて交渉団とTOP間で目的の定量的共有がなされなかったり、つまらぬ副次的な点に拘泥して目的を見失うことがある。建前の方が本質を表すことは多い。

リーマンショックのような突然の大きな困難に直面した時にこそ、経営者の日ごろの課題認識の深さが問われる。 危機感が全員に浸透しており、解決すべき課題にスピードをもって取り組むには絶好の機会である。 この時もやり切ることが必須であるのは言うまでもない。大きな問題が発覚した折に、「聞いていなかった」vs「報告を上げていたのに・・・。」というやり取りをよく聞く。 現場で起きた問題を組織として認知する(危険予知する)ためには“報告”では不十分で「問題である」という一言を添えた“アラーム”を上げる必要がある。

 

最後に…

いろいろな局面で何を考えて対処してきたか、経営と題して説明したが、組織の長として、考えて欲しいこと、やり切ることの大切さを伝えたいと思い話した。

今回はリモート講義なので、より参加意識を持ってもらうためにケーススタディーによる討議を多く取り入れた。多くのの受講生の発言を聞くことが出来た。さらに、講義終了後にも残った3、4人の受講生との議論ができ、「危機対応能力を強化する方法」といった講義の実践に繋がる質問もあり、時間を気にせずにじっくりと話し合えたのはリモートのメリットであろう。

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