東京工業大学「CUMOTⅹSTAMP連携プログラム」 テクノロジーの進化がもたらす産業構造・社会生活の変化と新たな事業機会 ~新たな競争軸(CASE)の出現~

講師:三木一克
元 (株)日立製作所機械研究所 所長
元 (株)日立メディコ代表執行役社長
現在 技術経営士

 

2021年2月9日、東京工業大学「CUMOTxSTAMP連携プログラム」にて、「テクノロジーの進化がもたらす産業構造・社会生活の変化と新たな事業機会 ~新たな競争軸(CASE)の出現~」と題して、受講生16名を対象にオンライン講義を実施した。このプログラムの目的は、次世代の企業経営を担う人材を対象に、技術経営士の会(STAMP)のメンバーが持つ「企業経営」、「新規事業開発」、「研究開発/技術開発」などの豊富な経験をもとに「実践例と討議課題の提示」「クラス討議/発表と解説」を通じた事例研究を行うというものである。

 

  1. 講義の概要

今年度で4回目になる私の講義は、過去3回(「グローバル市場変化に対応した新たな事業戦略と競争力強化策」や「新興国市場拡大に対応した新製品開発と事業展開」)のように企業で経験した研究開発や事業戦略に関する講義ではなく、将来予想される産業構造や社会生活の変化を提示した。講義テーマは最近、頻繁に新聞等でも取り上げられており、できるだけ最新の情報を反映しつつ、受講生が今後、事業を展開する上での参考となることを狙いとし、約1年をかけて講義用資料を作成した。講義の概要は以下の通りである。

  • AI、IoT、ロボット等の技術革新による第4次産業革命が進行する中で、世界の自動車産業は大きな転換点を迎え危機対応に迫られている。
  • 新たな競争軸 CASE ( Connected / Autonomous / Shared / Electric) の出現は、交通革命を生じるだけでなく産業構造と社会生活にも大きな変化を引き起こす。
  • 特に、ガソリン自動車から電気自動車(EV)への移行は、産業構造にパラダイムシフトを生み、ビジネスモデルが非連続に変化すると考えられる。
  • 自動運転OSの開発を通じて、巨大IT企業GAFAや新興勢が自動車産業に参入しつつある。
  • 次世代交通サービスMaaSは「移動」の概念を一新し、交通の利用効率を大幅に向上する。
  • 近い将来、新しい交通システムが誕生し、都市デザインが刷新される社会が到来すると予測される。トヨタとNTTによる実証都市「Woven City」プロジェクトが、2021年にスタートする。
  • EV用蓄電池により再生可能エネルギーの負荷変動が平準化され、太陽光発電の家庭での利用が拡大する。
  • TESRAの戦略(統合ECU、OTA戦略、agile開発、マーケティング戦略)は、商品構造、ビジネスモデルを根本的に変え、自動車産業に大きなインパクトを与えている。
  • このような状況の中で、日本の現状と課題を国内自動車産業、都市生活環境、都市物流、Vehicle to Home、石油サプライチェーン、急速充電の現状について示した。

 

  1. 「変化する将来に向けて私ならこのようなイノベーションを行う」をテーマにクラス討議

本講義の後半は、「変化する将来に向けて私ならこのようなイノベーションを行う」と題し、受講生が関係するあるいは思いつく製品・サービスや事業でのイノベーションを提案していただき全員で議論した。聴講をもとにした短時間での提案ではあったが、年配者向け新技術(ソフトウェア)教育システム、豊かな老後実現モデルのビジネス化、認証・決済自動化の物流無人配送、ワークシェアによる農業ビジネス、原子力発電によるEV普及の加速など、将来の日本社会にとって重要な提案がなされ興味の尽きない議論となった。

 

  1. 「技術の補完」が生み出すダイナミズムを説明

講義の纏めとして、日本経済新聞(2021年1月22日付)に掲載された柴田友厚学習院大学教授の記事「技術の補完性」を紹介した。自動車産業は技術体系の転換点に突入しており、「技術の補完性」が生み出すダイナミズムにより急速に転換が引き起こされる。電気自動車(EV)は、充電スタンド、自動運転、再生可能エネルギーとの補完性が強く相互に価値を補い合い高め合うことで普及拡大するとの主旨を説明した。

 

最後に…

今回の講義はオンライン形式で実施したので、従来のように講義中の受講者の反応は伝わらず、講義直後の受講生からの生の感想・質問を受けることもできなかった。しかし、東京工業大学側から事前に知らせて頂いた全受講生の自己紹介と講義テーマに対する関心の情報をもとに、受講生を意識して講義内容を重点化して説明することができた。そして、今回の講義の最後に、今回の講義とは関係しないが、企業経営を実践する上での指針として、これまでの会社生活での経験をベースに纏めた「リーダの心構え」を紹介した。「技術経営士の会」(STAMP)の大学支援活動は、講師と受講生の双方にとって、非常に有意義な企画であり、今後も継続・拡大を図っていきたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です