東京工業大学「CUMOTⅹSTAMP連携プログラム」大型・複合・国際化するプロジェクトにおいてプロジェクトリーダーに要求される資質は何か

講師: 野呂 一幸
元 (株)大成建設株式会社 常務役員設計本部長
現 技術経営士

 

2021年2月16日、「大型・複合・国際化するプロジェクトにおいてプロジェクトリーダーに要求される資質は何か」と題し、東京工業大学にて「CUMOT×STAMP連携プログラム」として、16名の参加者を対象に講義を行った当初、自宅からのZOOMによるオンライン授業を要請されたが、あいにく当方にZOOMが使えるCPUがなかったため、特別許可を貰い田町キャンパスからのオンライン講義となった。午後7時開講の30分前からZOOMシステムと悪戦苦闘し、ようやく講義をスタート。本日の講義は、企業・組織の中堅の受講者にとって喫緊のテーマである。

1.海外プロジェクトの問題点、課題を見抜き、立ち向かう姿勢の重要性を説く

日本企業が海外で展開する多くの事業・プロジェクトは大型・複合・国際化している。大成建設で数多くのプロジェクトで経験したことを紹介し、プロジェクトの課題を見抜き、プロジェクトリーダーに要求される資質は何かについて焦点をあてた講義である。プロジェクトリーダーは、オーナー代理人、オーナーコンサルタント、チーム内国際人材、国際契約書の手続き等、国内では考えられない問題で力を発揮しなければならない。チーム、コンソーシアムをリードするのに必要な人間力は古今東西同じである。こうした中、プロジェクトリーダーはコスモポリタンとしての存在感を示し信念をもって課題・問題に立ち向かう姿勢が重要となる。

 

2.プロジェクトリーダーの育成や資質について可能性を考える

今、プロジェクトはかつての個人のカリスマ性に依存するプルンシパル型からチームの総合力を活用するネットワーク型に変化した。プロジェクトにおいてオーナーやコンサルタントが複数化、設計チーム・施工チームが企業連合・協働化している。プロジェクトは入手前の事前調査、入手後のプロジェクトマネージメントにより成果が大きく変わる。プロジェクトの特性をいかに把握するか、プロジェクトリーダーのリーダシップが重要となり、多彩な専門機能のコンサルタントとの協調が要求される。国際プロジェクトにおいて、外国人(欧米+周辺国+現地)人材を活用しなければプロジェクトは動かない。外国人スタッフを活用するには、プロジェクトリーダーは信頼獲得が必須となる。如何に捌くかプロジェクトリーダーの真価が問われる。大型・複合・国際化するプロジェクトにおけるプロジェクトリーダーの育成や資質について具体的事例をもとに議論をした。

 

3.海外プロジェクトの事例をテーマにディスカッション

海外プロジェクトで実際に起きた問題を事例として挙げ、受講生とQ&A形式でディスカッションした。

 

事例1:ドバイ・ゲートウェータワー プロジェクトは、継続か中止か

Q1: ドバイショック発生の中、プロジェクトの継続か中止いずれの判断をするか

Q2: 建設途中での未回収金をcashでなく、イスラム債権で≒100億円受領
CASE1: 即イスラム債を80%で現金化するか
CASE2: 5年間保持して110%のリターンを期待するか

上記の質問に対して、多くの受講生が実際と異なるプロジェクトの継続、イスラム債の5年間の保持を主張したことは、やはり波風を極力立てないことを良しとする日本的な判断だと感じた。

 

事例:2 ボスポラス・プロジェクトの現場で発生した問題・課題 は事前に察知が可能か
Q1: 技術上の1番の課題は何か
Q2: 工事が中断する最大のリスクは何か

受講者の“A”は、海流の複雑な流れと多くの船舶が往来する海峡でのコンクリート函体の沈埋が、プロジェクトを左右すら課題となると考えた。実際の現場では、石油運搬列車のトンネル火災時の換気の技術的問題と、イスタンブールの遺跡発見による工事中断に注目することはできなかったが、プロジェクトの問題・課題を現場で実施段階でなく事前調査で十分検討できたことを、理解してもらうことができたことは大きな収穫であった。

 

4.今日的課題であるコロナ禍とSDGsについて問題提起

コロナ禍;After CORONA における未来都市への展望

三密こそが古来都市を成立させ都市と文明を誕生・成熟させてきた。都市には、行政・企業統治の表の顔と飲食・ギャンブル・風俗業の裏の顔があって、都市の奥行きを形成させてきた。三密こそが都市の秘めたるエネルギーであり、三密を否定する都市の明日は、魅力的、蠱惑的なものになるとは思われない。

 

SDGs:エネルギー革命への新たな挑戦

“石炭から石油 今また 石油から電気”へのエネルギー変換は都市・社会構造に大きな変化をもたらす。ガソリン自動車がなくなる社会は50歳以上の世代には想像できないことである。若者が活躍し問題解決への努力なしには未来都市は誕生しない。自動車会社トヨタの提唱するWoven City (スマートシティ)は魅力ある都市となるかを次世代の受講者に問いかけて講義を終えた。

 

最後に…

オンラインであったが、全員積極的にディスカッションに参加し白熱した議論ができた。教室形式の講義より一人々の表情、メッセージが的確に伝わってきた。時間を共有できたが空間を共有できない事による参加者全員がつくる雰囲気に欠ける物足りなさを少し感じた。

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