信州大学・STAMP連携講座 「経営者から学ぶ技術経営」について

講師: 野呂 一幸
元 (株)大成建設株式会社 常務役員設計本部長
現 技術経営士

 

5月20日東京に緊急事態宣言が発令されている中、神奈川県民であることを旨に信州大学・STAMP連携講座に出席した。大学・STAMP事務局からは延期かテレワーク授業の提案があったが、万全の対策の上での対面講座をお願いした。受講者25名と上田校舎からのオンライン参加者への授業となった。STAMPの大学講座は日本大学、東京工業大学、お茶の水大学、信州大学とネットワークの広がりを見せている。

長い歴史の中で生きてきた先人たちの知恵を説く

コロナ禍において多くの活動が停滞する中、各大学の熱意もあり対面講義、テレワーク授業を積極的に推し進めてきた。高度成長期に活躍した経営陣の知恵や成功や失敗談が少子高齢化、インターネット社会の中で参考になるか、的確なアドバイスが可能かの問題を抱えている。長い歴史の中で先人の知恵は生きてきた。ヒューマニズムと先端技術開発力は人類が育ててきた貴重な財産だ。次の若い世代に受け継がれることを期待して講義に臨んだ。

 

海外プロジェクトの問題点、課題を見抜き、立ち向かう姿勢の重要性:プロジェクトリーダーの未来への知見がチームを救う

日本企業が海外で展開する多くの事業・プロジェクトは大型・複合・国際化している。大成建設で数多くのプロジェクトを経験した。その経験を紹介し、プロジェクトの課題を見抜き、プロジェクトリーダーに要求される資質は何かについて焦点をあてた。プロジェクトリーダーは、オーナー代理人、オーナーコンサルタント、チーム内国際人材、国際契約書の手続き等、国内では考えられない問題で力を発揮しなければならない。チーム、コンソーシアムをリードするのに必要な人間力は古今東西同じである。こうした中、プロジェクトリーダーは、コスモポリタンとしての存在感を示し、信念をもって課題・問題に立ち向かう姿勢が大切であることを説いた。

 

プロジェクトリーダーの育成や資質について:プロジェクトリーダーの価値観の表明がチームの一体感を生む

今、プロジェクトはかつての個人のカリスマ性に依存するプルンシパル型からチームの総合力を活用するネットワーク型に変化した。プロジェクトにおいてオーナーやコンサルタントが複数化、設計チーム・施工チームが企業連合・協働化している。プロジェクトは入手前の事前調査、入手後のプロジェクトマネージメントにより成果が大きく変わる。プロジェクトの特性をいかに把握するか、プロジェクトリーダーのリーダシップが重要となり、多彩な専門機能のコンサルタントとの協調が要求される。国際プロジェクトにおいて、外国人(欧米+周辺国+現地)人材を活用しなければプロジェクトは動かない。外国人スタッフを活用するには、プロジェクトリーダーは信頼獲得が必須となる。如何に捌くかプロジェクトリーダーの真価が問われる。大型・複合・国際化するプロジェクトにおけるプロジェクトリーダーの育成や資質について具体的事例をもとに議論をした。

リーダーの人間力がチームを強くする。

 

海外プロジェクトの事例をテーマにディスカッション

 

海外プロジェクトで実際に起きた問題を事例として挙げ、受講生とQ&A形式でディスカッションした。

事例1:ドバイ・ゲートウェータワー プロジェクトは、継続か中止か

Q1: ドバイショック発生の中、プロジェクトの継続か中止いずれの判断をするか

Q2: 建設途中での未回収金をcashでなく、イスラム債権で≒100億円受領

CASE1: 即イスラム債を80%で現金化するか

CASE2: 5年間保持して110%のリターンを期待するか

上記の質問に対して、多くの受講生がプロジェクトの継続、イスラム債の5年間の保持を主張したことは、やはり波風を極力立てないことを良しとする日本的な判断だと感じた。

 

事例:2 ボスポラス・プロジェクトの現場で発生した問題・課題 は事前に察知が可能か

Q1: 技術上の1番の課題は何か

Q2: 工事が中断する最大のリスクは何か

受講者からは、海流の複雑な流れと多くの船舶が往来する海峡でのコンクリート函体の沈埋が、プロジェクトの課題となると回答があった。実際の現場では、石油運搬列車のトンネル火災時の換気の技術的問題と、イスタンブールの遺跡発見による工事中断が問題となった。プロジェクトの問題・課題を現場で実施段階ではなく、事前調査で十分検討できたことに気付いてもらうことができたことは、大きな収穫であった。

 

After CORONA における未来都市 SDGs はエネルギー革命

コロナ禍で“三密” (密閉・密集・密接)を避けるように盛んにTVから報道されている。しかし三密こそが都市と文明を創ってきた。現存する最古の都市遺跡モヘンジョダロそれに続くバビロン・アテネ・ローマ・ウィーン・パリ・ロンドン・NYそして江戸東京。都市には、行政・企業統治の表の顔と飲食・ギャンブル・風俗業の裏の顔があって、この両輪が魅力的な都市の奥行きを形成してきた。三密こそが都市の秘めたるエネルギーであり三密を否定する都市の明日は魅力的なものになるとは思われない。SDGs はエネルギー革命である。エネルギー革命は文明・都市を変えてきた。『石炭から石油』今また『石油から電気』へ基幹エネルギーが変わろうとしている。基幹エネルギー変換は都市・社会構造に大きな変化をもたらす。私の故郷三重に鈴鹿サーキットがある。高校時代、高額なMain Standのティケットは買えず、第4コーナーの丘に座って立ち上がってくるエンジン音を聞き、ポルシェだ、フェラーリだと興奮して友人と話したことを思い出す。ガソリン自動車がなくなる世界を高度成長期に青春を過ごした世代には想像ができない。

 

最後に…

先日トヨタが富士山麓にスマートシティ・ウーブンシティの着工を発表した。自動車会社に魅力ある都市が創れるでしょうか。不安と期待を持って見守りたい。未来型計画都市に日本の筑波学園都市、ブラジルのブラジリアがある。ブラジリアで働く人は、週末はブエノスアイリスに帰ってUrban Lifeを楽しむと聞く。歴史的な大きな出来事・事件は時代の進化をより加速させる働きがあると言われている。今回のコロナ禍もテレワーク、ネットショッピング、オンライン授業、地方居住さまざまの新しい日常を誕生させた。その進化は不安でもあり楽しみでもある。受講生の一人がそれでも卒業後は東京で働きたいと語ったことが印象に残った。三密を否定するUrban Lifeはどのようになるか。 Urban Lifeの未来は若い受講生の皆さんに託されていると話した。After Corona、SDGsがつくる世界は、先人が成果を上げた経験やルールが通用しない世界になるに違いない。若い世代にこそ切り開ける力があると信じる。若者の今後の活躍を期待して講義を終えた。長野からの帰りの新幹線9号車に乗客が私1人。コロナ禍の影響を強く感じたが高揚した気分で帰路に着いた。

 

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