信州大学総合理工学研究科 「STAMP講座経営者から学ぶ技術経営 – グローバル時代の技術者の役割を考える- 」

講師: 西郷 英敏
元 沖電気工業(株)常務執行役員
元 ㈱OKIネットワークス 代表取締役社長
現 技術経営士

 

2021年6月3日、青葉茂る信州大学長野キャンパスにて、「グローバル時代の技術者の役割を考える」と題し、21名の受講生に対して講義を行った。新型コロナウィルス対策で、緊急事態宣言地域在住の講師は、キャンパス内の別室からオンライン講義を実施した。受講者は教室での受講又は自宅から参加という形になった。

情報通信産業成立の歴史

通信事業の黎明期から近年までの歴史を振り返り、そこに大きく関わる情報処理との融合に焦点を当てつつ、情報通信産業の成立過程を見て行くこととした。

実際の講義においては以下のようなことを語った。

「情報通信」とは今では当たり前の言葉であるが、実は「通信」と「情報」各々の出発点は異なる。元々電話を含む通信事業は消費財の位置づけであり、コンピューターは事務機械分野の生産財としての役割からのスタートだった。

「通信」は明治18年に渋沢栄一たちが、逓信大臣榎本武揚に電話会社設立の嘆願書を提出するなど、早くから事業として大きな関心を持たれていた。その後約100年の歴史の中で、関東大震災や戦争で大きなダメージを受けるたび、一層の技術改良を加え制度も見直されて、今日の姿に至った経緯がある。その過程での判断は、勿論各時代背景に基づいて行われたものであり、期待どおりの結果をもたらした部分と、副作用が生じた部分が混ざり合っている。従って一つの決断はそれで終わりではなく、常に見直されてきた過程も紹介した。インフラ関係に携わる場合は、このような大きな流れを感じて近視眼的にならず、一度否定されたものや埋もれてしまったものなどでも、周辺の環境が整えば最適なものに変わる可能性があることを念頭に置いてもらいたいと伝えた。

一方、「情報処理」では、1964年東京オリンピックでのオンライン化成功などを契機として広域化機運が高まり、徐々に通信事業との距離が近づいて行った。制度の変更、PC,インターネット、移動体通信などの登場を経て、「生活空間での通信と情報処理の融合」が実現した。

 

情報通信産業の現状と課題

国内産業の推移と情報通信産業の現況を現す各種のデータを多数提示して、現状を共有するとともに、今後に向けての課題は何かを問いかけた。受講者個人を識別し難いためその場でのやりとりは諦め、問題が潜んでいそうなところを指摘して、個別レポートでの考察を促した。

 

ビジネスフレームワークとリスクマネジメント

これから社会に出る学生が出会うことの多い事柄を、2つ紹介した。

ひとつは、社会人が時折使うビジネスフレームワークで、「当てはめるだけで満足してしまう」などの問題はあるものの、「複雑な情報を構造化して整理できる」などのメリットもあり、適切に利用すれば有益となる。いずれ経験する先駆けとして例を2つ紹介した。もうひとつは、社会活動で常に直面する「リスク」に対応するためのリスクマネジメントである。講師陣には専門家も多いので、私からは基本的な考え方と製造業で経験したリスクを紹介するに止めた。

 

最後に…

後日の受講生のレポートでは実に多様な課題認識と提言が寄せられて、柔軟に発想してくれたことを大変頼もしく思った。深掘りすると企画書や稟議書のレベルに行きつくものなので、大学講座での扱いは難しいが、テーマ毎または究極一人一人との、さらなるディスカッションなどできれば、若い技術者にとって面白い経験が得られるのではないかと感じた。

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