信州大学総合理工学研究科 「STAMP講座経営者から学ぶ技術経営」

講師: 山浦 雄一
元 宇宙航空研究開発機構理事
元 三菱電機株式会社宇宙システム事業部 顧問
現 技術経営士

2021年6月24日、令和3年信州大学総合理工学研究科STAMP講座において、「宇宙国際プロジェクトに学ぶ 『全員の力』」と題して、信州大学キャンパス(長野市)にて21名の修士課程学生に講義を行った。

はじめに…

学生達が社会に出ると、官民を問わず「社会への貢献、価値提供」が使命となる。だが、目標が大きいほど実現への困難は大きい。巨大国際事業で苦難を乗り越え実現させる「根幹、力」を考えて貰うことを本講義の狙いとした。
題材には、講師が長年従事した国際宇宙ステーション(ISS)計画を選んだ。同計画は1985年に米日欧加の共同プロジェクトとして始まったが、当初から「実現は無理。特に日本は力不足」と思われていた。だが、計画は実現し、日本は「宇宙協力に欠かせぬ国際パートナ」となった。
講義では、様々な困難が続いたISS計画が何故実現できたのかを考察し、宇宙開発とは無関係の分野・仕事でも活かせるよう、経営・マネジメントと国際関係の視座に立ち、普遍性ある知見・教訓を提示した。

実社会の宿命 – 国家間の論理対立、異次元の想定外

プロジェクトでは、技術以外の「異質な課題」も次々と生まれる。実社会の宿命である。
講義では、「異質な課題」の実例として、(1)参加国の論理・利害が対立する難題の国際協議(例えば、ISS内事案への法適用、飛行士搭乗権の配分)、(2)ソ連崩壊・ロシア誕生(1991年)と2度目のスペースシャトル事故(2003年)という異次元の「想定外」を挙げて、対処の決め手を紹介した。

ISS計画実現への「全員の力」 – 大きなワンチーム、「日本らしさ」の発揮

ISS計画を実現させた「根幹、力」を、逸話を交えて述べた。「根幹」は、普遍化するほどにオーソドックスな複数の要因に行き着く。これら要因は、参加5極(米露日欧加:全15カ国)に共通のもので、5極が統合ワンチームとして機能した証である。その上で、日本チームの「日本人らしさ」と「独自性」の発揮を紹介した。昭和的とも言える正直・真摯に辛抱強く取り組む日本人の特性、更には、日本が発案・実現した実験棟「きぼう」と物資補給機「こうのとり」の独自性と戦略性と性能が、外国チームに「新参者・日本」を認めさせた。

強い使命感、先進国と戦う挑戦者魂、日本技術の底力、NASA手法の学習効果等々を、奥にある重要要因として紹介した。日本の他産業やチームスポーツにも共通点があろう。ISS計画従事者のつとめとして、同計画を通じて日本が得たものを「国家の矜持」の視点から語り、ISS話題を締めくくった。

講義のまとめ – 学生達へのメッセ-ジ

講義のまとめに、事業の達成(=社会への貢献、価値提供)には何が必要かを問い掛けた。事前の講義資料で予習課題とし、講義の中で学生の回答を得ながら私の考えを提示した。実社会では「答えは多様」であることを伝えた。

昨今、社会に重い責任を担う組織(官民)のガバナンスの在り方が様々報道される。顧客(~市民)への価値提供を、社会的責任を持って行うことはマネジメントの基本である(ピーター・ドラッカー)。顧客の信頼を得ること、そのためには真摯にタイムリーに説明責任を果たすことが不可欠であると、2050年より先をも担う学生達に申し上げた。

最後に…

講義最後のQ&Aの場で、学生2名と担当教授から計5件の質問を受けた。いずれも高い視点からの質問で、ありがたい思いで回答した。レポートテーマには、個性ある多様な答えを期待して題材を選んだ。レポートは、講義後のWEB受講者を含め21名から提出された。自分の考えをしっかりと書いてくれた学生が何人も居た。彼らの将来に手応えを感じて、講師として清々しさの残る講義となった。

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