信州大学総合理工学研究科 「STAMP講座経営者から学ぶ技術経営 新しい時代の研究開発 とそれを活かす技術経営 ~オープンイノベーションを実のあるものにするには~」

講師: 上田 新次郎
元 株式会社日立プラントテクノロジー
元 代表取締役副社長
現 技術経営士

2021年7月8日、「新しい時代の研究開発とそれを活かす技術経営~オープンイノベーションを実のあるものにするには~」と題して、信州大学総合理工学部修士の学生20名に対し、講義を行った。

企業における研究開発の役割と変遷

企業の基本機能は、「マーケテイング」と「イノベーション」の2つであり、研究開発はいつの時代でも企業の成長エンジンである。企業における研究所の誕生は20世紀の初頭で、1930年代デユポン社のナイロンの発明と独占的事業化に範を得て、リニアモデルに基づく中央研究所の時代が始まった。戦後、リニアモデル全盛の時代が続いたが、1980年代以降、米国に次いで日本でも中央研究所の時代は終焉し、マーケット重視、短期回収評価などにさらされるようになった。21世紀になってデジタルテクノロジー等技術革新の拡大とスピードは格段に上がり、企業の研究所は新しい時代に入った。

オープンイノベーションの時代の研究開発

新しい時代では、マーケット重視に留まらず、顧客の課題を「協創」により解決するソリューション創造型研究、異業種が連携する水平分業型共同研究、学のシーズに期待する産学連携、ベンチャーとの連携など、いずれもオープンイノベーションを活用するスタイルになった。事業の形態も大きく変わりつつある。モノづくり系企業(メーカー)は、製品事業からサービス事業との融合に向かい、インフラ、サービス系事業においても高度技術社会に対応する技術経営は、経営の肝になりつつある。オープンイノベーションとデジタルテクノロジーは相性がよく、その活用は企業盛衰のカギを握るであろう。事例として、顧客との協創を、デジタルテクノロジーをベースとして推進をしている日立を取り上げ、その狙い、事例、課題などについて述べた。

新しい時代の研究開発と技術経営のヒント

研究開発を牽引するには、将来像を描けるコンパスを持ち、自らイノベーションに挑戦することである。21世紀の主たるキーワードは環境とデジタルである。環境は多分野に跨るが、中心は地球温暖化防止・気候変動の緩和であろう。日本は昨年やっと        2050年CO2排出量実質ゼロの宣言をした。欧米や新興国にも後れをとっている。2050年に向けて新たなエネルギーミックスを描き、これを実現するのが皆さんの課題でありチャンスである。デジタルテクノロジーのもたらすものは詰まるところ生産性の向上による利便性と豊かさである。リアルワールドの喪失や監視社会などの懸念もあるが、新しい文化を創造する可能性もある。ポストデジタルテクノロジーも含め、皆さんの挑戦に期待したい。

皆さんに贈った6つの言葉

理工系グローバルリーダーを目指す皆さんに、次の6つの言葉を贈った。
①社会の変化に関心を向ける、②広い視野を養う(鳥瞰図的のものを見る)、③その道のプロになる(自分の意見を持つ)、④他者の立場で見る(思いやり)、⑤グローバルなコミュニケーション能力を持つ、⑥イノベーションを牽引する。

最後に…

講義に熱が入り、ほとんど時間一杯話すことになり、質問は担当教授からのものだけになった。対面授業であるのにも関わらず質疑ができず、学生の反応が心配であった。しかし、後日、20名全員から提出されたレポートを見て、驚くとともに嬉しくなった。いずれも研究開発のあり方から、将来自分の目指す職種や仕事の取り組み方について、また環境やデジタルテクノロジーについてもよく考察され、自分の意見が述べられていた。授業が終わった時の静かな雰囲気とは対照的であった。これだけ考察できるのであれば、討議の時間をとるべきであったと反省した。1.5時間の講義では足りなかったかもしれないが、その場での討議の習慣を学生達につけさせたいと思った。全体として将来を担う学生達を頼もしく感じた。

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