信州大学総合理工学研究科 STAMP講座経営者から学ぶ技術経営 ‐ Big Data時代のAIの一考察

講師: 森田 隆士
元 (株)日立システムズパワーサービス代表取締役社長
現 技術経営士

2021年7月15日、信州大学長野(工学)キャンパスにて、「Big Data時代のAIの一考察」と題し、22名の受講生に対して講義を行った。18名はキャンパス内C3棟201番講義室での対面形式であり、4名はリモート形式であった。

はじめに…

「情報」と云う日本語に対して、英語では「Data」「Information」「Intelligence」と使い分けている。この3つの使い分け中、今回は(Big) Dataと(AI)Intelligenceとの関連を中心に紹介した。

ICT、IOT技術動向

AIのNEEDSとして、今後の社会の大変化後のイメージ例を紹介した。AIのSEEDSとして、ICT、IOTの各要素技術の動向も説明し、今後のAIの課題を挙げた。

AIは、現在既に「道具」として、或る特定の分野で使われている。今後は、通常のビジネス現場においても、AIとの「共同作業」が行われる可能性がある。その「共同作業」では、人は創造的作業にシフトしていく様子も示した。AIを実現させる技術の動向として、CMOSデバイスの「ムーアの法則」の限界が2025年頃にやってくると推察されている。即ち、2024年辺りから実現されるシステムが、「ムーアの法則」の恩恵を受ける最後のシステムとなる可能性がある。コンピュータアーキテクチャの大変化が起こると推測さていることを話した。

CMOSデバイスに代わる新テクノロジーとして、脳型処理(ニューロモーフィックデバイス等)、強化学習・最適化問題(量子デバイス等)等々は期待されるが、汎用的一般的に使われるのは2028年~2030年近辺との推定もある。2025年近辺が大きな変曲点、端境期という観測を述べた。その端境期の「橋渡し」として「CMOSデバイスのエンハンス」等々も大切となる可能性があることを、実例を挙げて説明した。

又「メデイア処理」に関しても、2023年~2025年辺りに、大変化が起こるという事例がある。例えば、「メデイア処理の画像認識」関連では、2023年以前は一般人並みの認識である。顔認識、行動認識は出来るが、用途が作業支援・リスク検知に止まっている。2023年以降は、職人並みの認識が可能となり、自動運転、予兆診断、専門的作業自動化に進む大変化の可能性がある。

さらに、AIを実現する上で必要な他の要素技術「メデイア処理の音声対話」「クラウドコンピューテング」等々の技術分野でも、2023年~2026年で大変化が起こる予測の根拠となる事例を紹介した。

AIの歴史と動向

AIの歴史を簡単に振り返ると、第一世代、第二世代を経て、現在は第三世代AIである。第一世代、第二世代では「AIが実現できる技術的な限界」と「社会がAIに期待する水準」との乖離が明らかになり、ブームは下火に終わった事柄について説明した。

一方で、技術として、第三世代AIの技術課題を述べながら、推定される第四世代AI技術について紹介した。2023年頃から数年かけて、エクスポネンシャルな進化が予想される第四世代AI技術のロードマップ案を示した。「AI人格化」も、視野に入っている事も説明した。人の気分に依ると思われる事も、大量データ分析結果、既に関数化出来ている事例も合わせて話した。今後のAI事業には、多面的多角的学問の参加が必要と示唆しているのである。

このように、AI取り巻く各方面・分野の分析から、2023年~数年の間に大変曲点の可能性大と紹介した。その間の勝者達が、事業分野で2025年以降の何処かでトップグループ形成する候補となりそうであるとの感触を伝えた。また、ビジネスチャンス有りそうなテーマ(有望な技術開発テーマを含む)の具体例を話した。

社会との関係 AI活用事例

現時点の第三世代AIの具体的な事例を紹介しつつ、AIの役割を説明した。学生のAIレベルがマチマチの場合を想定して、今回は次の3つの視点から説明した。

第1視点は「デジタルツイン」である。リアル空間を出来るだけサイバー空間上に実現して、サイバー空間で解析してリアル空間のオペレーションに反映する視点である。その為には、出来るだけ多くのデータをサイバー空間に配置する必要が有る事を具体的に説明した。デジタルツインの考え方をDX(デジタルトランスフォーメーション)の普及の為に役立てて頂きたいとの思いもある。

第2視点は、「教科書データ」である。最初に手にする大半のAIについては、一般的には「AIを教育する」事から始めなければならない事を事例で示した。その為の「教科書データ」の入手方法も議論した。信州大学に、AI導入を検討されている地場企業から相談が来ていると伺い、その一助となればと考える。

第3視点は、「『高度テクニック』の『エンジニアリング』化」である。熟練者ノウハウをAIにフィードバックする実現手段も紹介した。AIの効用の一つである本視点を、後述の関連事例資料も使いながら具体的に話した。信州大学に地場産業の経営者から「事業継承」の相談も来ていると伺った。製造業を始め、AIを「ノウハウの継承」の手段として活用して頂き、ひいては「事業承継」のご検討に役立って頂ければと思う。

AI活用に向けた一つの視点

此処まで説明した内容を踏まえて、Big Data時代のAIについての考察を紹介した。

第一点は、「従来のSE事業の変質可能性について」である。信州大学の講義では、データサイエンティストの観点から紹介した。現時点のITスキル・フレームワーク(例 ITSS)でも、職種としての「SE(システムエンジニア)」は表面上見当たらない。

先に紹介した ICT・IOT技術動向、AIの(歴史と)動向、及び今後のAI活用事例の説明を踏まえITSSで規定されている職種「コンサル」「ITアーキテクト」的な職種と捉えて良い「データサイエンテイスト」の重要性を、従来SEとのポジション比較を交えて解説した。さらに、経営経験から、データサイエンティストの一部は、「IT(Information Technology・情報通信)技術者」ではなく、「DT (Data Technology・データ流通)技術者」とも呼ばれる方が、当面はふさわしいとの意見を述べた。学生の皆さんには今後の進路検討に役立て頂ければありがたい。

第二点は、「データサイエンティスト(DT技術者)の業務プロセス」についてである。ビジネスに必要な価値・プロセス定義について、テンプレート(*1)を使って、考察を述べた。

第三点は、「Big Data時代のAI適用・活用プロセス」についてである。データ(或いはデータ集合体)からインテリジェンスに至るプロセス(バリューチェーン)例を具体的に示しながら、どのプロセスでAI活用が見込まれるかの考察を紹介した。

講義終了後

講義最後に、信州大学が「ロボット+AI」分野で指導的役割を、されに発揮される事を期待している旨を申し上げた。その活動の中で「DT技術者学会(仮称)」を立ち上げられる事も期待していると申し上げた。

学生の皆さんからは、地場産業からの信州大学へのご相談関連で、質問が挙がった。地場産業のDX絡みでAIを出来れば使用したい様相である。そこで、実際経験した具体事例・事柄を記載した別資料をスライド投影して紹介し、「To Be」へのアプローチ方法が大切との意見も述べた。

また、後日提出された受講生のレポートを読ませて頂き、まず最初に受けた印象は、受講前の学生間でのAIに関する認識レベルの格差は、想像以上にあった。講義前は、どの認識レベルを中心に据えて講義するか迷ったが、3つの視点から色々な具体実施例に紹介しながら学生のAI認識を深めようと心掛けた。AIを既に使っている院生、漫画等の書物でしかAIを認識していなかった院生、AIの人格化の研究が始まっている事を本講義で知った院生等々、レベルはマチマチで有ったと思われる。講義後は、ほぼ学生諸君全員の意見は、AIに対する認識が大きく深まった、変ったと感じた。

次に、学生が考えたAIに関しては、実現性の高いテーマ、ビジネスチャンスがあるテーマも多く見られた。講義ではキーワードのみを説明した重要テーマ(例えば、エネルギー関連)についても、意見を述べていたレポートも見受けられた。即ビジネスとして有望と思えるテーマもあったと感じた。 今後、テーマ毎或いは描かれたAI毎に議論、検討を深めれば面白いビジネスに発展していくとも思う。

最後に…

総じて、信州大学、学生の皆さんのAIに対する関心の高さを改めて感じた。今後の研究等々の候補として、御一考頂ければ、産業界及びAIの発展にとっても願っても無い事である。そして、信州大学が機械工学とAI及びDT との融合分野でも、日本をリードし、新たなイノベーション事業を立ち上げていく事を期待してやまない。

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