経営者から学ぶ技術経営

上田 新次郎

 

「技術経営士の会」は技術に対する幅広い知見と経営者としての豊かな実践経験を有するシニア世代の集団である。会員は技術を生かした経営の真髄を次の時代を担う学生に伝えようと、2016年から日本大学、お茶の水女子大学、信州大学の理・工学系の大学院生に、また東京工業大学では社会人向けMOT(Management of Technology)の一環として講義を行ってきた。受講生からは、企業経営経験者の実体験に基づく講義と討議、解説が非常に有益で示唆に富むなど高い評価が寄せられた。2020年度もこの講座(STAMP講座)を引き続き進めていくが、一例として2018年と2019年にお茶の水女子大学で行った「イノベーションを創出し続けるためのプロジェクトマネジメント特論」を紹介する。

13名の会員が行った講義のカバーする技術と事業の領域は極めて広く多岐にわたっている。キーワードで挙げていくと、「オープンイノベーションと研究開発」「日本的精神のプロジェクトにおける価値」「人工知能(AI)と働き方改革」「失敗学から成功学へ」「ケータイ文化を創る」「Suicaの開発・導入から発展へ」「技術に立脚した経営」「事業経営の現場」「メタエンジニアリングによるイノベーションの創出」「水インフラビジネスのグローバル展開」「ワークスタイル変革を促進するテレワーク」「研究開発の役割と新製品開発の施策」「ナノテクノロジーの世紀」「CSR経営」などがある。どの講義でもそれぞれの分野での技術や社会・事業環境の変遷などを背景に、技術経営についての考え方、方法、マネジメントや将来展望について豊富な実践経験をもとに語られ、さらにはリーダーとしての人間性やリベラルアーツの重要性なども語られた。1時間30分の時間では語りつくせないものがあり、質疑の時間も十分とは言えなかった。その代わり講義の後にフィードバックされたアンケートでは、約40名の受講生全員から熱心な感想と鋭い質問が寄せられた。数十件に及ぶ質問に対し、講師は一つ一つ丁寧に回答を送った。回答には答えもあるが、共感や問題意識の共有など講師も考えさせられることもあった。これらを通じて学生達の旺盛な意欲、真摯さ、将来への期待・希望も知ることができ、講師陣も人材育成のお手伝いをできたことを実感した。学生にはこの講義で学んだ実践的技術経営を心に留めながらさらに広く勉学に励み、将来企業や公的機関、研究機関などのイノベーションのけん引役になることを講師一同期待している。

お茶の水女子大学では2020年度も5月から約3か月にわたってSTAMP講座を予定している。講義の進捗とともに各講師から講義の内容や感想などについて、技術経営士ジャーナルの「知見の大学講座」に寄稿する予定である。

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