2020年度お茶の水女子大学「プロジェクト特論」 ―インベーションを創出し続ける理工系グローバルリーダーの育成―

上田新次郎

(元)日立プラントテクノロジー代表取締役副社長

技術経営士

 

6月3日、お茶の水女子大学の学生22名を対象に、オンラインにて「2020年度お茶の水女子大学プロジェクト特論 -イノベーションを創出し続ける理工系グローバルリーダーの育成」と題した講義の中で、「新しい時代の研究開発~オープンイノベーションを実のあるものにする研究開発と技術経営~」について話った。

 

オープンイノベーションの時代の新しい研究開発の在り方を検証

研究開発は企業の成長エンジンである。20世紀初頭以来の企業における研究開発の役割と変遷について辿り、高度技術社会のさらなる進展が見込まれる将来に向けて新しい研究開発の在り方について述べる。リニアモデルからマーケット重視、さらに顧客連携・協創というオープンイノベーションの時代を迎え、これを実のあるものにするための研究開発と技術経営について考察をする。

 

研究開発はいつの時代も企業の成長のエンジン

企業の基本機能は「マーケテイング」と「イノベーション」の2つであり、研究開発はいつの時代も企業の成長のエンジンである。企業における研究所の誕生は20世紀の初頭で、1930年代デユポン社のナイロンの発明と独占的事業化に範を得てリニアモデルに基づく中央研究所の時代が始まった。戦後、リニアモデル全盛の時代が続いたが、1980年代以降、米国で次いで日本でも中央研究所の時代は終焉し、マーケット重視、短期の投資回収評価などにさらされるようになった。

 

21世紀の企業の研究所はオープンイノベーションを活用

21世紀になってデジタルテクノロジーなど技術革新の拡大とスピードは格段に上がり、企業の研究所は新しい時代に入った。マーケット重視にとどまらず、顧客の課題を「協創」により解決するソリューション創造型研究、異業種が連携する水平分業型共同研究、学のシーズに期待する産学連携、ベンチャーとの連携などいずれもオープンイノベーションを活用するスタイルとなった。

 

デジタルテクノロジーと相性がよいオープンイノベーション

事業の形態も大きく変わりつつある。モノづくり系企業(メーカー)は製品事業からサービス事業との融合に向かい、インフラ、サービス系企業においても高度技術社会に対応する技術経営は経営の肝になりつつある。オープンイノベーションはデジタルテクノロジーとの相性がよく、その活用は企業の盛衰のカギを握るであろう。事例として、顧客との協創をデジタルテクノロジーをベースにして推進している日立を取り上げ、その狙い、事例、課題などについて述べた。

 

21世紀のキーワードと次世代の技術経営のヒント

21世紀のキーワードは、環境、グローバル、デジタル、生命科学などである。次世代の技術経営のヒントは、ESG経営・投資と、デジタルテクノロジーを活用した生産性の向上、新生活機会の提供・技術マーケテイングであろう。

 

最後に・・・

今回はコロナ禍のもとでのオンライン講義で授業中に学生とのやり取りなどはできなかったが、21件の感想と16件の質問が寄せられ、手ごたえを十分に感じ取ることができた。質問は、研究開発からイノベーションへの取り組み方・課題、日本企業の競争力、将来の社会の姿など広範囲にわたるもので、受講生の旺盛な意欲、真摯さを知ることができた。新しい世代の若者たちが広く世界に目を向け、様々な問題に取り組み、イノベーションを牽引してくれることに期待したい。

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