2020年度お茶の水女子大学「プロジェクト特論」 ―エネルギーシステムの変遷と再生可能エネルギー普及の課題

講師:黒坂 俊雄

元 神鋼リサーチ(株)代表取締役

現 技術経営士

 

「エネルギーシステムの変遷と再生可能エネルギー普及の課題」と題して、2020年6月24日、お茶の水女子大学にて講義を行った。講義はオンラインにて実施し、20名強の参加者であった。

 

1.講義の概要:

気候変動問題への対応や再生可能エネルギーの導入において、日本は欧州と比較すると相当に取り組みが弱いと認識されている。エネルギーの問題は、産業、経済、インフラ、生活の在り方、地域、などと係わっていて、複雑な社会システムの課題でもある。再生可能エネルギーの導入を進めるには関連ビジネスの成長が欠かせないが、ビジネスの成長にどのような因子が関係し、何がボトルネック工程なのか、多面的な視点を持つことが問題解決に欠かせない。

本講義では、産業や生活で扱うエネルギーの量のイメージを紹介し、再生可能エネルギーの扱うエネルギー量と、素材製造産業などのエネルギー量の桁があまりにも異なるため、再生可能エネルギーの導入が気候変動問題に対して万能の解決策ではないことを示した。それでも、気候変動が災害を増加し、そのことが貧困につながるとすれば、再生可能エネルギーの割合を高める必要性があり、経済活動と両立させるには再生可能エネルギー関連ビジネスをもっと拡大する必要がある。再生可能エネルギーの拡大に関連しては、地域経済格差の問題や社会インフラ、国としてのエネルギー備蓄の問題、など様々な因子と関連があることを紹介した。

最後に事例として、木質バイオマスの熱利用が、欧州では普及しているが日本ではほとんど普及していない理由について、林業の生産性向上などの社会システムや熱利用関連機器・部品のサプライチェーンの差異が関連しており、技術とコストに大きな差が生じていることが挙げられることを示し、工学的な技術知識共有化が問題解決につながる可能性を指摘した。

 

2.伝えたかったこと:

最近のコロナウィルス対策は、潜伏期間が長く症状が自覚されないケースもあるため、オーバーシュートが発生するなど感染症制御が難しいが、サイエンスを信じた上で経済と両立する道を選択することが重要と考える。気候変動問題は、コロナウィルスより更に時定数の長い地球の気候と経済システムの問題であり、非常に制御が難しいと想定されるが、やはりサイエンスを信じて、経済と両立する道を模索するのが重要と考えている。

私は、鉄鋼や機械開発の経験から、再生可能エネルギーの小さな規模では製造業を支えるには無理があることを実感していたが、世の中には再生可能エネルギーの位置づけや定量的な効果をイメージできるように解説された良書が意外に少ないと感じていた。また、最近は、木質バイオマスの小規模な熱利用に関して、日本の熱利用技術が欧州に比べて遅れていることに気がついた。林業の製造業としての生産性向上が遅れたために、木質燃料のサプライチェーンがないなど関連市場が限定的な結果として、バイオマスボイラーの技術開発も遅れて、社会で共有されている技術知識に欧州と大きな差が生じている。地域社会の活性化には再生可能エネルギーは貢献できると考えているが、技術の課題について触れている良書も少ない。そこで、再生可能エネルギーを話題として、問題解決に関連する様々な視点を私なりに提供し、学生の皆さんの今後の活動のヒントになればと考えた。

技術と経済が関連する複雑な問題の解決には、ボトルネック工程がどこにあるのか、社会システムも含めて押さえることがとても重要であり、その事がイノベーションにもつながってくる。ボトルネック工程を把握するには、影響因子を量的な効果もイメージしながら、自分の頭で再構成することが重要と考えており、本点についても学生の皆さんに是非伝えたかったポイントである。

 

最後に・・・

オンライン授業であり顔が見えないために、うまく伝わっているのか心配になりながら、講義を実施した。後日、ほぼ全員の学生から、感想と質問が届いた。学生の皆さんの理解度がとても高いことに感心した。また、感想文として、短い中にも丁寧に記述がされており、真面目に聞いてくれたのだと実感できた。

感想では、考え方の方法を学んだと言ってくれた人、日本の技術に遅れている部分があることに驚いたという人、量イメージが理解できたのでボンヤリとしたこれまでの課題が明確になってきたと言ってくれた人など、皆さんの視点から私の言いたいことをすくいとってくれたと実感できた。講師としては大変嬉しい感想文であった。このような講義の機会を頂いたことにも感謝したい。

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