「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第二十四回 原価半減は設計者の仕事

-今までの設計を疑う 非常識は将来の常識

 

「原価を半減しないと・・」と追い込まれたことはありますか。筆者の苦労話です。80年代中頃、温度センサーの設計を担当しました。それは、数個の部品からなる、コイン1,2枚で済む安価でシンプルな車載製品でした。ジャパン・アズ・ナンバーワンと騒がれていた当時、円高が急激に進みました。海外製品との競争が激しくなり、撤退を考慮する事態に追い込まれたのです。しかし、その製品の担当であった筆者としては切なく、なんとか生産を続けたかった。

続けるには、大幅なコストダウンしか選択肢はありませんでした。原価の半減です。直ぐに、生産現場へ頼みに行きました。反応は・・まともに取り合ってもらえなかった。10%や20%なら生産現場の力による低減の余地があるのですが、さすがに50%低減は、現場の採算向上活動の範疇ではなかったのです。

それでも、設計担当(筆者)は、めげなかった。直ぐに頭を切り替え、部品点数を減らすしかない。同じやるなら「部品点数を1/2」へチャレンジ。周りの者から無謀と思われても、取り組みを始めました。

筆者が担当になる前から、この製品は利益率が低空飛行でした。毎年コストダウンに追われていましたが、いつまで経っても儲からなかった。なぜなら、設計対応が、重箱の隅をつつくようなことに終始していたからでした。

まず、世界の主要メーカの製品を調べました。驚いたことに、自社品も他メーカの製品も全て、見た目は違えども基本構造が同じだったのです。

「よーし、それなら同じ構造は取らない!」と決めました。少し細かい内容になりますが、

それまでは、1mm程度の感温素子から極細のリード線が出て、金属板でできたターミナルにつながっていました。それを樹脂成形で造ったケースに入れていました。この構造が長年の間、常識だったのです。

取った方法は、リード線は廃止しました。ターミナルに直接素子を固定したのです。更に、樹脂ケースもやめました。素子を樹脂成形の金型の中へ直接置き、一発で素子を樹脂で固めたのです。(いわゆるインサート成形)

当時としては「非常識といわれる構造」にしたのです。部品点数は狙い通り1/2に、原価はなんと、1/3になりました。「ダントツの原価」達成です。もちろん技術課題はありました。生産現場とチームを組み、力を合わせ一つ一つ乗り越えました。生産を続けることになったのは、言うまでもありません。

「ずーっとこのように設計してきた、だけれども他の設計方法がきっとある」、と一度立ち止まって考えてください。コストダウンのネタが見えてきます。こうも言えます、「今の非常識を常識に変える」、設計者の仕事です。

ー以上ー

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