「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第二十五回  提案型の設計とは

―顧客の「真のニーズ」を見極める

 

「提案型の設計をしたいのですが・・」と問いかけられる。筆者は、顧客の「真のニーズ」を見極めていますか、と聞き返します。「真のニーズ」とは、組み付けやすくしたい、もっと高速で動かしたいなど、顧客にとっての「うれしさ」です。うれしさをつかむと「提案型の設計」が可能となります。このように設計すれば、こんなうれしさが見込めますと、顧客へ投げかけることが出来るのです。こうです。顧客の現場で部品の組付けに立ち会ったが、作業がしにくいようだ。そこで「先端を面取り形状にすれば、スムーズに組み付きます」、と言う。このようにうれしさ、つまり真のニーズを見出し、顧客へ投げかける。これが「提案型の設計」の基本です。

自動車部品を設計していた80年代後半のことです。売り上げ先細りの挽回を狙い、駆動系システムに使われる部品の設計に取り掛かりました。それまでさまざまな部品を手掛けていましたが、自動車メーカーから受け取る仕様書通りに設計するのが常でした。一方、新たに取り組んだ部品は先発メーカーが数社ありました。そこで、これら競合メーカーに伍して受注するため、設計の方針を次のように掲げました。「真のニーズを踏まえた性能(以下、ダントツの性能)を見極め、競合を圧倒する」、です。

まず「ダントツ性能」を自動車メーカーから聞き取ろうとしました。ところが、その自動車メーカーでは部品を使っている部署と外注先の窓口を担当している部署とが別で、その窓口からは外注先に発行される仕様書以外の情報を得られませんでした。一方で、私たちは製品の使用部署の誰とも面識がなく、意見交換できる状況ではなかったのです。

ではどうしたのか。自分たちは「部品屋」であったのですが、一歩踏み出し、顧客の立場に立った「システム屋」として取り組みを開始したのです。分かりやすく言うと、部品メーカーや材料メーカーの技術者であったとしても、自動車などの最終製品を扱う技術者のつもりで、取り組むということです。

顧客が扱うシステムの現物を見る、新車解説書などの文献や特許の調査を進めました。試行錯誤の連続でしたが、自動車メーカーのシステムコストダウンにつながる性能を見極めたのです。顧客へ提案し、採用頂いたのは、言うまでもありません。

提案型の設計は、自動車メーカーと1次部品メーカーの間だけではありません。1次と2次部品メーカー、どのような顧客と部品メーカーの関係でも可能です。顧客の立場に立って、

真のニーズを考えると、提案型設計の糸口が見えてきます。是非取り組んでください。

ー以上ー

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