「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第28回  設計の傑作と駄作を分けるもの

-技術や知識を活かす 執念があってこそ

 

一昨年、仕事で秋の東北を訪れた時のこと。稲穂が頭(こうべ)を垂れ、新米への準備が整いつつあった。雨にも風にも負けず、猛暑にもおろおろせず、すっくと立つ稲に、「困難に立ち向かう」設計者はよく似ているなと、徒然(つれづれ)なるままに考えた。

筆者が学生であった頃、先生からご指導いただき、印象が深く、今でも覚えている言葉があります。

「工学を目指す者には、体力が絶対条件である。開発といえども、ものづくりは非常に泥臭い世界で、ガスボンベをかつぐような仕事も重要になる。しかし、知識や技術は『T』形を心掛けよ。自分にとって専門をここだと決めたら誰よりも負けない深みを持たせよ。他の分野は浅くてもよい。広く知れ。そうすると技術者としてやっていける」

その後、さまざまな自動車部品の設計を経験するたびに、専門技術の深みも、周辺分野の幅広い知識も共に足りない、足りないと、先生の言葉の重みが身に染みた。

同時に、毎日苦しみながら、先生が本当に伝えたかったこと。それは、「技術と知識」は高め続けよ。だが、それだけではだめで、「執念」を持て! つまるところ「執念という裏打ちがあって初めて、技術や知識が活きる」ということに、やっと気づいたのです。

エンジンに使われるあるパーツが劣化しているか、検出するセンサーを設計した時の経験です。当時、実用化しているメーカーはなく、技術的ハードルが高いことは分かっていました。運よく技術を補完し合える企業があり、互いの知見を持ち寄れば、解は見つかるとスタートしたのです。しかし、現実は厳しかった。思いとは程遠く、五里霧中に陥ったのです。

それからは、社内の関係者や共同開発企業と打ち合わせては、「次はこの方法を試してみよう」。案を考えては実験、実験しては知恵を絞る日々が、3年間続きました。その後、筆者は担当を外れましたが、開発は続いたのです。

こういうことです。困難に立ち向かい、解を見出すには、知識や技術と共に情熱や執念が必要なのです。新たな知見は、今持っている知識を活かす執念がもたらすのです。

この事例が特別か、そんなことはない。手がけた数多くの設計を振り返っても、持っている技術や知識だけで乗り切れるケースは意外と少なかった。なぜなら、設計とは、既存のものを変える取り組みだからです。簡単そうに見えても、思いもよらない課題が潜む、それが設計の本質なのです。

以上、一言で表現するとこうです。「執念に勝った設計は傑作、負けると駄作」。設計者は、是非かみしめて欲しい。

ー以上ー

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です