「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第三十一回目 図面は全社で描く

­ -関係する全員の知恵・知見を入れる

 

5月も下旬、既に入社され設計部署へ配属となった方もみえるでしょう。私も入社当時の職場は自動車部品の設計でした。

ところで、仕事柄、これまで1000人以上に「図面は誰が描くのか」と問い掛けました。返ってきた答えは全て「設計者」でした。設計は設計者だけで完結するとか、CADで図面を作成することが設計との思いの表れでしょう。

しかし、期待する答えは「図面は全社で描く」です。

初めて量産図面を担当した時のことです。私は日程会議に図面を持って臨みました。日程会議とは、設計や品質、生産技術、生産などが一堂に会し、図面を基に、部品手配や生産工程準備についてのスケジュールと役割を検討する場でした。

図面を配布して説明を始めると、生産技術のベテランの課長が突然、「こんな図面でものを造れると思っているのか!」とすごい剣幕で私を一喝しました。図面に加工のし易さや組付け工程へ配慮が出来ていなかったのです。製図版に向かって線と数値を書けば図面と思っていたのでした。それから足しげく現場に通い、現場のリーダや班長の声を聴きました。

では、現場の声を聴くとは、どのようなことでしょうか。それは、1個の部品図面でも、現場が困らないか、余分な工数が生じないかなどの現場の作業や実力を踏まえるということです。私が経験した樹脂部品の事例を3つ紹介します。

・現場の実力を知らずにCADでエイヤーと打つと、抜き取り検査の頻度が増え、最悪は全数選別となりかねません。利益も吹っ飛びます。現場班長の意見をよく聞き、設計上必要な値との合意点を見出します。

・成形の実作業が分かっていないと描けません。型割りは可能か、パーティングラインのバリは許容できるか、樹脂の湯まわりは問題ないか、ウエルドライン位置は強度上大丈夫か・・など。更に、加工工数や金型費も見込めねばなりません。さまざまな現場の知見が必要です。

・樹脂材料を選ぶには、材料特性を熟知せねばなりません。強度だけでも、静的強度、温度と強度、吸水と強度、熱劣化と強度、クリープ変形…など実に多くの知見が必要です。社内の材料に詳しい人や材料メーカに相談せねばなりません。

このように、図面は、設計以外に、生産技術、生産、品質、材料、調達、企画など関係する全ての部門の総知・総力を注ぎ込んで、初めてまっとうな図面となります。これが「図面は全社で描く」ということです。設計者の仕事は、総知・総力を図面という形にまとめることです。

ー以上ー

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