「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第三十二回 法規制が技術開発を促す

-設計者は目線を高く 世界の動きをウォッチ

 

政府が2035年までに乗用車の新車販売をすべて、ハイブリッド車などの電動車にとの目標を掲げています。先月、ホンダは2040年に世界市場で販売する全車両を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にすると表明。電動化の動きから目が離せません。

これらの動きに先立つ昨年の9月、米国カリフォルニア州の知事が、2035年までに州内で販売される全ての新車の乗用車と小型トラックについて、排気ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務付ける知事命令に署名しました。知事の命令を受け、同州大気資源局(CARB)が具体的な法規制づくりに着手すると報じられました。

筆者は、若いころ排気ガス規制対応に使う自動車部品の設計に携わりました。その当時から、世界の排気ガス規制をリードしていたのがCARBでした。CARBと聞き、以下のことを思ったのです。

今後のCARBの動きは、米国の他の州はもちろん、欧州や日本などの法規制に大きな影響を与える可能性があるだろう。更にこの動きは、設計者にとって見逃せない視点がある。それは「法規制」というニーズが「技術を大きく進化」させる原動力となることだ。

それでは、進化の事例を見に半世紀以上前のカリフォルニア州にタイムスリップ。

当時、ガソリンのエンジンへの供給は気化器という方式でした。現在はガソリン噴射と呼ぶ方式が主流ですが、そのはしりの装置はドイツのボッシュ社が開発。メルセデス・ベンツ車に採用されたのが1957年のことです。しかし、使い勝手が悪いなどまだまだ技術課題がありました、

時を同じくして、カリフォルニア州では自動車の大気汚染防止法が成立。規制が強化されました。当時からカリフォルニア州の販売台数は米国全体の10~20%を占める大きな市場で、輸出攻勢をかけていた欧州メーカーはなんとしても強化された規制をクリアせねばならなかった。

ボッシュ社は開発を加速した。規制値を世界初の電子制御を使った方式で乗り越えようとチャレンジした。そして1968年に、現在の電子制御燃料噴射装置(EFI)の原型モデルをフォルクスワーゲン車へ搭載したのです。

日本も米国の規制を受け、排気ガス規制を段階的に強化。日本のメーカーもボッシュから技術供与を受けるなどし、1970年代初めに電子制御燃料噴射装置を市場に投入しています。

このように、法規制というニーズは、技術の進化を促します。自動車部品の設計者は、目先の業務のみにとどまらず、少しだけ目線を高くし、各国の車の電動化、もちろん自動運転化への動きもウォッチしてください。設計者は世界の動きを知ることが大切です。

ー以上ー

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