「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第四十一回 ものづくりの「不易」

-1つの不具合も出さない取り組み

 

ホンダは2040年までに世界での新車販売を全て電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)に切り替えると打ち出した。トヨタとホンダがレベル2、3の自動運転機能を市販車へ搭載。電動化、自動運転化への取り組みから目が離せない。

一方、どのように技術環境が変わろうと、ものづくりの「不易」(変わってはいけない基本)、それは1個たりとも品質不具合を出さない取り組みです。

もう15年余り前になりますが、筆者は東南アジアの国々を訪問。自動車部品メーカーの状況をこの目で観るためでした。数多くのメーカーを訪れました。ある都市の郊外に良く整備された工業団地がありました。真っ直ぐに延びた道路の両側は、緑滴(したた)る並木がどこまでも続いていました。その一角にある自動車部品メーカーを訪れた時の出来事です。

偶然にも、そのメーカーは筆者がかつて手掛けた製品と同じ目的のものを、設計し始めていました。そのメーカーの社長から設計リードタイム(必要な開発期間)を聞かれ、「4年間ぐらいはかかるだろう」と答えたのです。彼はとても驚いた様子でした。どうやら「半年」程度の答えを期待していたようなのです。

そこで、4年間が必要な理由を説明したのですが、なかなか理解してもらえなかった。分かりやすくとの思いを込めましたが、最後までかみ合いませんでした。このメーカーの課題は、「設計をやりきる」ことだったのです。「設計力」を高めればもっと良い取り組みが出来る潜在力のある企業でした。

改めて、この連載で取り上げる「設計力」とは、品質100%を目指した設計段階の取り組みを「やりきる力」です。抜けなく設計課題を出し切り、それぞれの課題を論理的に説明し、試験実験などで定量的に検証します。このように、設計のステップを進めていく力です。

新製品の設計は課題が山積です。それでも妥協することなく課題をつぶしていかねばなりません。品質100%を追い求めるか、95%程度で諦めるか──。天と地ほどの差があります。もっと言えば、最後の1%を追求することがとても大切で、しかも大変なのです。この連載第9回目で取り上げましたが、最後の1%を解決するため、設計工数の50%を使うと言っても過言ではありません。4年を要する理由がここにあります。

確かに、半年程度でも「似たようなもの」は設計できるでしょう。しかし、9合目で設計を妥協する、1個の不良を是とする取り組みを許容している、可能性が否めません。設計者は9合目で妥協してないか、今一度振り返ってみではいかかでしょう。

ー以上ー

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