「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第四十二回 設計者の時を超えた悩み

-理論で説明し 試験実験で検証

 

少し前になりますが、大いに興味を引く新聞記事がありました。「国立天文台などの研究チームが、天の川銀河は中心付近にある天体も、中心から約5万光年離れた外周付近の天体もほぼ同じ速度で銀河中心を軸に回っている。宇宙にある質量の多くを占めると考えられる「暗黒物質」が大量にないと説明できない現象と、発表した」。

筆者は思うのですが、人類は自然界の現象を数多く解き明かしてきました。だが、分かっていることより、理論的に説明しきれない未知の現象が、まだまだ多い。もちろん、世界中の研究者の努力で、これからも一つ一つ明らかにされていくことでしょう。

さて、ものづくりは研究に比べると泥臭い取り組みですが、基本は同じと筆者は考えます。

何が同じか、この連載「第2回なぜ不具合は起きる」で取り上げました、「図面に書かれたことは全て「理論」で説明出来、試験実験で定量的に「検証」出来ねばならない」という点です。

設計は、なぜその構造にしたか、なぜその方式を選んだのか、なぜその寸法で良いか説明することが仕事です。だから、設計は大変なのです。もちろん、未知の理論を解き明かすではなく、既に分かっている理論を応用することが主な取り組みです。そうであっても、「理論」と「検証」を両立させた「理屈」での説明は容易でないのです。

筆者のつたない経験は、理屈で説明しきったと胸を張れるケースは、欲目に見てもありませんでした。納期が厳しい、人工が足らないなどの背景はあったにせよ、理論「めいた」説明はしても、自信がない箇所がいつも残りました。また、検証は、当時シミュレーションが発展途上で、現物で評価しました。しかし、予算は厳しく造る試作品の数が限られるなど、データ―数が十分でなかったり、上下限品(性能などのバラツキを反映した試作品)まで手が回らなかったり、思い通りとはいきませんでした。検証「めいた」ことに終始したのです。一言で言うと、悩み苦しみました。

筆者は仕事柄、設計者から問いかけられあることがあります。「納入先や市場での品質不具合が減らない」「DR(デザインレビュー)をやっても期待したほど・・」。

そこから見えてくるのは、筆者が悩んだ経験は、多くの職場に当てはまるということです。程度の差こそあれ、「理論で説明し試験実験で検証」は、時を超えた課題なのです。

ではどうするのか。これをやれば良い、そのようなものは残念ながらありません。問われるのは職場の総合力です。その総合力こそが、この連載で取り上げている「設計力」なのです。

ー以上ー

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