「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第二回なぜ品質不具合は起きる

        ―自然はだませない 市場からしっぺ返し

 

なぜ品質不具合をなくせないのでしょうか。

これまでに「まあいいだろう」「こんなもんだ」「過去からこうだ」と思いながら設計を進めた経験はないでしょうか。そんな経験はないという方は、品質不具合とは無縁です。しかし、そうした設計者は少ないはずです。めったなことは起きないと思って出荷すると、納入先はいとも簡単に品質不具合を見つけるものです。運良く納入先をスルーできても、その不具合は市場で起こります。

今日まで40年近く設計の指針としている言葉があります。それは、筆者が新入社員のころに配属された技術部長から聞いた「自然はだませない、必ず市場から何倍もしっぺ返しを受ける」という言葉です。

実は、この「自然はだませない」、これこそが品質不具合の本質なのです。

入社間もないころの失敗の経験です。その自動車製品は、数年間の市場実績がありました。筆者が担当したときに、新たな自動車メーカーから引き合いが来ました。ルールに従い使われる環境を調査し、評価しましたが異常は認められませんでした。ただ製品の搭載場所が従来のエンジンに対して低く、製品の内部に燃料が浸入しやすい環境でした。燃料が浸入した場合に想定される不具合は、内部のゴム部品の破損でした。燃料に影響を受けないゴム材質へ変更することも考えましたが、コストアップを伴いました。そのためこのときは、「ガソリンが溜まり、かつある一定の条件が加わってはじめて影響が出ること」、またそれまでの市場実績を考慮しめったなことは起きないと、従来の材質のままとしました。ところが、市場に出始めてしばらくすると、不具合品が帰ってきました。浸入した燃料が原因でゴム部品が破損していました。大騒ぎとなり急遽、燃料に影響されないゴム材質へ変更する対策を打ちました。当初使っていたゴム材質が燃料に影響を受ける分子構造であったにもかかわらず、実験結果と過去の実績から問題なしと判断したことが、故障を引き起こしたのです。コストを優先し、理論に背いたことで、自然からしっぺ返しを受けたのです。

社内と納入先で承認されても、市場、すなわち自然は理論に反したものを承認しません。市場クレームやリコールで答えます。これが「品質不具合の本質」です。

つまり。設計要因の品質不具合をなくすには、「図面に書くことは全て理論で説明し、且つ、試験・実験で理論が間違っていないことを検証できなければならない」のです。

ハードルは限りなく高いのですが、設計者は常に意識し、かつ目指し続けることが、品質不具合低減の一丁目一番地です。

―以上―

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