「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第三回品質不具合を減らすには同じ失敗を繰り返さない

         ―過去の経験を今の設計に「関連付ける」ことが難しい

 

先週この欄では、設計の品質不具合はなくせないことを取り上げました。とは言え、なくせいないまでも、減らすにはどうすればよいのでしょう。

品質不具合を起こした企業に、その不具合が「またやってしまった(同じ原因の失敗を繰り返し起こした)」と「こんな故障は初めてだ(経験したことのない原因で起きた)」のどちらかと聞くと、多くの企業が前者(繰り返し)と答えます。歴史のある企業ほどその傾向が強いといえます。

そうなのです。品質不具合を起こすと大変な思いをしますが、意外なことに品質不具合の件数を減らす取り組みはシンプル(単純)です。

不具合の発生件数を減らす最も効果的な方法、それは「過去を振り返る」ことです。ただし、実は過去を振り返るのは簡単なことではありません。2つの壁があります。

まず1つ目の壁。品質不具合が起きると、大変だと強い印象を受けます。しかし、大きな品質不具合であっても、発生から 3 年、5 年と時間がたつにつれて、印象は薄れていきます。しかも、品質不具合を起こしたのが隣の部署やグループ会社と、自分の職場との距離が遠くなるほどその印象はますます薄れていきます。どんなに大きな品質不具合でも頭の片隅に埋もれていってしまいます。

それぞれの企業は、過去の失敗事例がその企業の歴史の長さの分だけあります。何もしなければ、その貴重な経験は歴史の中に埋もれていきます。残し、伝えることが出来ない企業は、以前と同じ原因の不具合を起こしてしまうのです。

2つ目の壁。もちろん、企業は失敗の経験を忘れないように仕組みを工夫しています。失敗事例を記録し、勉強会を持つでしょう。しかし、このようにして過去の経験を知っても、同じ失敗を防ぐのは簡単ではありません。

「こんな失敗があったな-。そうだ、今取り組んでいる設計のこの箇所は要注意だ!」と

過去の経験を今の仕事に「関連付ける」ことが難しいのです。

かつて起こったある大規模なりコール。日常の経験を活かせば、その不具合は未然に防げる可能性があるものでした。筆者はこれまで1千人以上の技術者に、件(くだん)の不具合の原因について問い掛けてきましたが、そうだ、この経験が関係すると気づいた人は皆無に近いのです。

過去の品質不具合の経験を知っていることと、今の設計にその経験を活かすことはイコールではないのです。

次週は、過去の失敗の経験を残し、活かす取り組みを取り上げます。

―以上―

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