㈱ワールドテック 寺倉修
第四回 失敗の経験の残し方
―「技術上」「管理上」の教訓 共に残すことがポイント
品質不具合の件数を減らす効果的な方法は、失敗の経験をしっかり残すこと、と先週取り上げました。
それでは、「失敗の経験から何を残すのでしょう」。それは過去トラと呼ばれる失敗から学ぶ「教訓」です。教訓は、二つあります。一つは「技術上の教訓」、もう一つは「管理上の教訓」です。共に残す、これがポイントです。
まず「技術上の教訓」。品質不具合が起きると、原因を突き止め対策を打ちますが、これで終わりではありません。忘れてはいけないのは、純粋に技術のどこで失敗したかを残すことです。それが技術上の教訓です。
自動車部品に使われる電気接点は非接触(電子)式に置き換わってきましたが、かつてはメカ(機械)式接点が主流で、導通不良に悩まされるケースが多くありました。技術上の原因は、シリコーン(樹脂系材料)から出る成分が接点表面に膜を造り、微弱電流を流れにくくしたのです。この原因から得られる教訓はというと、「シリコーンを接点近傍で使用してはいけない」です。
このように、技術上の教訓は、こんな設計をやってはいけないという普遍的な知見です。この知見は、「この部位はあの失敗に関係する、慎重に設計しよう」との気づきを高めます。
次に「管理上の教訓」。それは仕事のやり方が、どのようにまずいから不具合を起こしたのか、明らかにすることです。「仕事のやり方のまずさ」が管理上の教訓です。
失敗したのは、技術がなかったからと結論づけると、同じ失敗を繰り返す可能性が残ります。同じ失敗をなくすには「技術で失敗したのは、仕事のやり方がまずかった」と振り返ることが大切です。
事例でシリコーンを接点近傍で使った行為は結果です。仕事のやり方が異なっていれば、接点に悪影響のない材料を選定していた可能性があります。
例えば、「シリコーンと接点の知見が職場にあるにもかかわらず、設計基準に反映されていなかった」場合。基準の整備が出来ていないことが、接点不具合を引き起したのです。管理上の教訓は「設計基準を最新の状態へ見直すことを徹底すべし」となります。基準が整備されている場合は「設計基準の順守を徹底すべき」となるでしょう。
このように、管理上の教訓は不具合発生の背景でさまざまです。職場でしっかり議論し、仕事のやり方の真のまずさを見出さねばなりません。
技術上何が足らなかったか、仕事のやり方のどこがまずかったのか、セットで残すことが大切です。
ー以上ー
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