「設計力®」とはやりきる力 【毎水曜掲載】

㈱ワールドテック 寺倉修

第二十回 製造業は「自然を加工する業」

-なぜそのように描いたか、図面を説明できますか

 

設計者のあなたは「無から造りだしたものがあるか」と問われたら何と答えますか。私は今、机に向かってパソコンでこの原稿を作成しています。上を向くと蛍光灯が目に入り、横を向くと壁と窓…。私たちの周りは物であふれている。人間は実に多くのものを造ってきました。しかし、無から造りだしたものはあるかと問うと、「何もない」ということに驚きを持って気づく。何のことはない、私たちは地球にあったものを吸い出し、掘り出し、生えているものを伐採して、それらを加工してきたのです。限りなく複雑・高精度な加工もあるでしょう。だが、所詮私たちの周りにもともと存在するものに手を加えただけです。

私たちは、このもともと存在するものを自然と呼びます。人間は自然を加工してきたのです。つまり、ものづくり(製造業)とは「自然を加工する業」なのです。

私は自動車部品の設計を数多く経験しましたが、常に失敗の連続でした。技術的な課題を潰していくのですが、最後まで残った課題はなかなか解決しませんでした。仮説と検証を限りなく繰り返し、半年、1年はあっという間に過ぎました。失敗し続けた結果、学んだことは、設計に「偶然うまくいくなどあり得ない」でした。

言い換えるとこうです。「自然は理論で動いている。故に、自然を加工する業の取り組みは、理論に沿っていなければならない」──。 これが「設計の大原則」です。

研修で受講者に、「設計は理論に沿っていますか」と聞くと、「そのように取り組んでいる」と返ってきます。さらに問いかけます。「1枚の図面に寸法が100箇所あるとします。理論に沿うとは、100全ての寸法値の根拠を説明できることです。例えば、10±0.05という寸法に対し、『±0.025に厳しくしなくてよいのか?』、あるいは『もっとラフではいけないのか?』と聞かれたら、根拠を説明できますか?」と。やっとことの大変さに気づく。

実際図面に書かれたデータは膨大だ。寸法だけでも何百、ともすれば何千箇所に上るでしょう。だが、書いたからには根拠を説明しなければならないのです。

ところが、設計経験のある人はすぐに「そんなことは不可能だ」と気づきます。品質的に重要な部位や心配な箇所だけはしっかり検討しようと取り組んでも、やりきることは簡単ではないのです。ましてやその他の箇所は、「まあこれぐらいで大丈夫」と進めることになるでしょう。しかし、自然はそのことを見逃しません。市場クレームというしっぺ返しで答えてきます。

「設計は自然が相手」、設計者のあなたにはしっかり認識して取り組んで欲しい。その取り組みこそが、この連載で取り上げている「設計力」です。

ー以上ー

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